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(イラスト:高松 啓二)
(イラスト:高松 啓二)
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 前回(第13回)に引き続き主要プレーヤーの特徴や戦略を紹介する。今回は8位の米DigiLens(デジレンズ)である。DigiLensについては、2013年に出願された2件の重要特許が知得されたため、これらを紹介する(図1)。

図1 上位出願人の各社特徴(トップ5〜8)
図1 上位出願人の各社特徴(トップ5〜8)
(出所:知財ランドスケープ)
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 まず、「JP6847901」(2013年、年平均被引用数67.6、図2)は、「透明導波路ディスプレイ」に関するもの。一方の「JP6238965」(2013年、年平均被引用数38.2、図3)は、「ホログラフィック広角ディスプレイ」に関するものだ。いずれも回折格子方式の改良である点で潮流(図4)を押さえたものといえ、注目に値する。

 両出願とも「ディジレンズ」と称するモザイク状の回折デバイス層(高分子分散液晶を含む)を複数有している。液晶の特性を利用したスイッチング制御により、高効率・高性能のAR(拡張現実)グラスを実現するものである。回折格子方式の中でも存在感が大きいため、なおさら注目に値する。

図2 JP6847901(2013年、年平均被引用数67.6)
図2 JP6847901(2013年、年平均被引用数67.6)
(出所:知財ランドスケープ)
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 上述したJP6847901には、赤青緑の光のうち、青/緑の光を混合して導波路を2層化するという示唆があり、同内容を記した論文など(右下)も確認される。本出願から5年後の2018年には、これを実現した薄型高性能化に成功しており(左下)、なおさら注目に値する。翌年2019年には、シリーズCで5000万米ドルの資金調達を果たし、2021年には、シリーズDで新たに5000万ドルの資金調達を果たして、韓国Samsung Electronics(サムスン電子)や三菱ケミカル(図5)といった大手のユーザーやサプライヤーも参画するなど存在感を増しており、有望なスタートアップ企業といえよう。

図3 JP6238965(2013年、年平均被引用数38.2)
図3 JP6238965(2013年、年平均被引用数38.2)
(出所:知財ランドスケープ)
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図4  MaaS(Mobility as a Service)の潮流
図4  MaaS(Mobility as a Service)の潮流
IPランドスケープで2019年にあぶり出した。(出所:知財ランドスケープ)
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