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 とりあえず3%の賃上げを表明したものの、どうやって実現するかは検討中──。

 大手建設コンサルタント会社を対象とした日経コンストラクションのアンケート調査で、多くの会社が心もとない状況のなか、「賃上げ加点」を受けていることが分かった。

 賃上げ加点とは、国土交通省が2022年4月の契約案件から適用している入札優遇措置のこと。法人税法上の「大企業」は3%、「中小企業等」は1.5%の賃上げを実施すると表明すれば、総合評価落札方式の入札で加点を受けられる。

 建設コンサルタントは建設会社と比べて決算期が分散しているので、賃上げ時期が4月ではない会社が多い。そのため、22年の賃上げがまだ決まっていない会社が目立った。

大手建設コンサルタントの賃上げ状況
大手建設コンサルタントの賃上げ状況
「定期昇給を含む賃上げ」には、賞与や残業代などを含まない。「賃上げ率の算定方法」の列にあるカッコ内は平均年齢。「―」は未定あるいは無回答。日経コンストラクションが2022年5月に実施したアンケート調査に基づく
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 日水コン(東京・新宿)とアジア航測は22年4月の給与から賃金を改定しようと動いていたが、6月時点でまだ組合と交渉中だった。賃上げの内容が決まれば、4月に遡って適用する。

 22年の賃上げが未定の会社には21年の実績を答えてもらったところ、定期昇給を含む賃上げ率(賞与や残業代を含まず)は、回答があった13社のうち6社が3%に達していなかった。ベースアップ(ベア)を実施したと回答した会社はなかった。

 大卒の初任給は、回答があった17社のうち6社が引き上げた。エイト日本技術開発(岡山市)と長大は1万円のアップと奮発している。建設技術研究所とオリエンタルコンサルタンツ(東京・渋谷)、応用地質は上げ幅が小さいものの、2年連続の引き上げだ。

2022年4月入社の初任給の額
2022年4月入社の初任給の額
一般職・総合職などに分かれている会社は総合職の金額を記した。カッコ内は21年4月入社からの引き上げ額。カッコの表示のない会社は21年4月入社と同額。日経コンストラクションが22年5月に実施したアンケート調査に基づく
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 大手建設コンサルタントでは新型コロナウイルス禍の影響が比較的小さく、業績が好調なため、高い採用意欲が続いていることが背景にある。しかし、ベアゼロの状態で初任給だけ引き上げれば、入社2年目社員との逆転現象が起きかねない。初任給の引き上げが、既存社員の今後の賃上げに影響する可能性がある。