USB充電器の大電力化と小型化が進んでいる。その原動力となっているのが、窒化ガリウム(GaN)のパワー半導体の採用だ。GaNパワー半導体は、シリコン(Si)のパワー半導体と比較して、スイッチング損失が少なく、高効率に電力変換が可能であるため、発熱が少なく小型化ができる。
今回、日経クロステックは、半導体周辺回路と応用製品の開発・設計を得意とするエンジニアリング会社のWave Technology(兵庫・川西)に依頼し、GaNパワー半導体を搭載したUSB充電器の性能評価と、内部構造の分析を行った。同社は開発・設計の知見を生かす形で、リバースエンジニアリングサービスも提供している。
評価の対象は、オンラインサイトで販売されている1つのUSB PDポートを持つ65W級USB充電器である(図1、図2)。具体的には、中国Ankerの「Nano II 65W A2663」、中国Sundix(ブランド名:Amoner)の「USB-C Charger AM65C01」、中国Aohai technology(ブランド名:AOHi)の「MAGCUBE 65W PD Mini Fast Chager AOC-C004」、中国Mackertopの「AC ADAPTER SBT200325UZ」を調査した。比較対象としてSiパワー半導体(MOSFET)を採用している米Apple(アップル)の67WのUSB充電器も評価した。
大きさは、Anker、Amoner、AOHiがほぼ同じ。各辺4cm程度の立方体で、体積当たりの出力は、1W/cm3程度だった。Markertopの製品がやや大きく体積当たりの出力は0.71 W/cm3だったが、アップルの製品はそれ以上に大きく、0.44 W/cm3だった。
ロードレギュレーション:6%の誤差が生じる製品も
では性能はどうか。最初に評価したのが出力電圧の安定性を調べるロードレギュレーションである(図3)。充電先の負荷を変更していった場合、基準の出力電圧がどのように変化するかを調べたものだ。負荷が変化しても電圧は一定であるのが望ましい。出力電圧が5Vの場合と、20V(アップルの製品のみ20.3V)の場合を測定した。
結果は、図4の通り。このグラフの(b)と(c)は、負荷を上げていった場合に5Vまたは20Vからどれだけずれが生じるかを示したものだ。5V(図4(b))では、一目瞭然、AnkerおよびAOHiの製品は負荷が大きくなっていっても、ほとんど誤差が生じることなく一定である一方、その他は大きく変化をしている。特にMarkertopの製品は出力に応じて誤差が大きくなり、3Aに達した辺りで6%を超えた。Amonerの製品は負荷に対する変動こそ少なかったものの、出力電圧に常に約6%の誤差があった。アップルの製品は、負荷に応じて誤差は増えていったが3Aのときで3%程度だった。20V(図4(c))については各製品とも、どの負荷に対しても誤差は少なく出力が安定していた。