大学などから発信された最先端研究の概要をお伝えします。

最先端研究ウオッチ
目次
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北海道大学などが全固体電気化学熱トランジスタ、熱伝導率を電気制御
北海道大学の太田裕道氏らの研究グループは、実用可能な全固体電気化学熱トランジスタを作製した。液体を用いた従来の熱トランジスタと遜色ない熱伝導率であるオン/オフ比4を実現した。熱制御デバイスとしての応用が期待できる。
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広島大学などが有機薄膜太陽電池を高効率化、結晶化促進で変換効率約2倍に
広島大学大学院の尾坂格氏らの研究グループは、有機薄膜太陽電池(OPV)のエネルギー変換効率を向上させることに成功した。2種類のp型有機半導体(半導体ポリマー)と4種類のn型有機半導体を用い、それぞれを組み合わせて作製したOPVの発電特性を調査し、高結晶化した半導体ポリマーを用いたOPVが約2倍の変…
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東京工業大学などが3次元有機化合物の直接合成手法を開発、創薬応用へ
東京工業大学の永島佑貴氏らの研究グループは、2次元化合物に炭素やホウ素、ケイ素を導入しながら3次元化合物を直接合成する新しい分子変換反応を開発した。加えて、多元素化3次元化合物テトラヒドロキノリンがさまざまな化合物に変換可能な合成プラットフォームとして利用できることを明らかにした。医薬品や生理活性…
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横浜国立大学が可視波長領域のデュアルコム分光技術、精密計測に
横浜国立大学の洪鋒雷氏らの研究グループは、赤外波長領域の光コムを可視波長領域に変換し、高精度な可視デュアルコム分光技術の開発に成功した。可視デュアルコム分光の精度を従来の2.5~5倍に向上させた。環境モニタリングや長さ精密計測の産業応用に活用が期待できる。
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名古屋大学が厚さ1.8nmの強誘電体ナノシート、低温で合成可能
名古屋大学の長田実氏らの研究グループは、水溶液プロセスによりセ氏60度の低温で、単位格子数個の厚みを有するチタン酸バリウム(BaTiO3)ナノシートを合成した。ナノシート1枚での強誘電特性を評価したところ、単位格子3個に相当する厚さ1.8nmの原子膜まで維持されることを確認した。超薄膜における特異…
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北海道大学が室温で高電圧動作可能なスピンLED、光スピン素子開発に弾み
北海道大学大学院の樋浦諭志氏らの研究グループは、超高速動作に必要な高電圧下で高効率に動作するスピン発光ダイオード(LED)を開発した。高電界の印加で失われる電子のスピン情報を独自のスピン増幅により復元した。光スピン素子開発の加速が期待できるという。
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東京大学などがセルロースナノファイバーで透明板材、建築物や輸送機の構造材に
東京大学大学院の石岡瞬氏らの研究グループは、木材由来のセルロースナノファイバー(CNF)のみから成る透明かつ高強度の板状材料を開発した。強度がアルミニウム合金やガラス繊維強化プラスチック(GFRP)などと同等である一方、これら軽量構造材よりも軽い板材を作製した。建築物や輸送機の採光性・視認性向上に…
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九州大学など、過酸化水素を安全に合成する触媒を開発
九州大学の小江誠司氏らの研究グループは、水素と酸素から過酸化水素を安全に合成する触媒を開発した。水素の合成や分解を担う天然ヒドロゲナーゼ酵素の機能をヒントにした。次世代のエネルギーである水素を利用した新たな合成反応の基盤となる研究成果だという。
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北海道大学がゲルで脳神経組織を再構築、新治療法開発へ
北海道大学大学院の田中伸哉氏らの研究グループは、神経幹細胞を培養可能なハイドロゲル(以下、ゲル)を作製した。マウスの脳内にゲルを埋め込み、その後神経幹細胞を注入することで脳組織を再構築させることに成功した。将来の脳損傷治療につながる基礎技術として期待できるという。
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東京大学など、スピンホール効果の大きい直方晶タングステンを発見
東京大学大学院の石河孝洋氏らの研究グループは、進化的アルゴリズムと第一原理電子状態計算を組み合わせた結晶構造探索手法により、らせん構造をとる直方晶タングステンを発見した。巨大スピン流が観測されている立方晶タングステンよりも大きなスピンホール効果を示す。新たな巨大スピン流発生材料の開発につながる研究…
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熊本大学、バンドギャップ可変の金属酸窒化物半導体ナノシートを合成
熊本大学の伊田進太郎氏らの研究グループは、バンドギャップ可変の金属酸窒化物半導体ナノシートを、層状化合物の剥離反応を経由することにより合成した。カリウムやランタン、ニオブを含む層状酸窒化物の合成とそのナノシート化を実現し、酸素と窒素の比を制御することでバンドギャップ可変の酸窒化物半導体ナノシートを…
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東京理科大学がマグネシウム電池用正極材、LIB超えも期待
東京理科大学の井手本康氏らの研究グループは、高い放電容量を有し、2次電池の正極材料として使用可能なマグネシウム酸化物を合成し、結晶構造と電子状態の解明に成功した。正極材料として使用すると256mAh/gという大きな放電容量が得られることを実証した。既存のリチウムイオン2次電池(LIB)の特性を超え…
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農研機構がイチゴ収穫日の予測・制御技術、需要に合わせてJIT生産
農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)は、イチゴの収穫日を高精度に予測し制御する技術を開発し、人工気象室内で実効性を検証した。需要に合わせた収穫時期の調整が可能になり、安定出荷につながる。イチゴ農家の所得向上への貢献が期待できるという。
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東京農工大学が人工細胞の変形をペプチドで誘起、分子ロボット応用へ
東京農工大学大学院の川野竜司氏らの研究グループは、人工細胞(リポソーム)の変形を、細胞膜に結合するペプチドによって誘起することに成功した。これにより、人工細胞を形状制御できる可能性を示唆した。リポソーム型分子ロボットへの応用が期待できる。
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東北大学などが摩擦面の損傷部をAIで特定する技術、接触回避も可能に
東北大学大学院の村島基之氏らの研究グループは、機械の摺動(しょうどう、しゅうどう)面の損傷部位をAI(人工知能)で特定する技術を開発した。加えて、特定した表面損傷部との接触を回避する新しい摺動面システムも開発した。発電タービンなどにおける重大インシデントの回避技術として活用が期待できる。
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産総研など、n型MoS2トランジスタで低コンタクト抵抗を実現
産業技術総合研究所(産総研)の張文馨氏らの研究グループは、三テルル化二アンチモン(Sb2Te3)/二硫化モリブデン(MoS2)のファンデルワールス界面の作製に成功し、n型MoS2トランジスタの性能向上に貢献する接触界面抵抗の低減(低コンタクト抵抗)技術を開発した。MoS2は2次元結晶構造を有する材…
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筑波大学などが100%液体のレーザー光源、イオン液体に色素添加
筑波大学と九州大学大学院の研究グループは、液体でできた微小なレーザー光源を開発した。室温イオン液体を用い、超撥水(はっすい)性表面を持つ基板上で条件を最適化し、微小液滴を作製した。柔軟な光デバイスの実現が期待できる。
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信州大学などがロボット作業手順の自動作成システム、ニューラルネットで状況予測
信州大学とエプソンアヴァシス(長野県上田市)の研究グループは、ロボットの作業手順を提案する知能システムを開発した。ロボットが作業の手順を自ら考え出し、人間が指定した通りに物品を配置することなどができるようになる。人間がルールを与える方式では実現できない状況予測を可能にした。
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広島大学などが強誘電性と圧電性に優れるセラミックス材料、鉛系材料代替に
広島大学大学院のキム・サンウク氏らの研究グループは、非鉛系圧電セラミックス材料を合成した。チタン酸バリウム(BaTiO3、BT)とビスマスフェライト(BiFeO3、BF)を固溶させて合成したBF-BTセラミックスがこれまで明らかになっていない新しい物理的起源により、優れた強誘電性と圧電性を示すこと…
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大阪大学がセ氏300度超で動く抵抗変化型メモリー素子、アモルファス酸化ガリウムで
大阪大学大学院の佐藤健人氏らの研究グループは、抵抗変化型メモリー素子であるメモリスターをセ氏300度を超える高温下で動作させることに成功した。アモルファス酸化ガリウムを使用することで、安定性よく確実に抵抗が変化するメモリスターを実現した。高温下や航空宇宙・耐放射線などの極限環境下での利用が期待でき…