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 米カリフォルニア大学ロサンゼルス校や東北大学などの研究チームは、ナトリウムイオン2次電池(NIB)の負極に適したハードカーボンから成る連続周期構造の「カーボンマイクロラティス」を3Dプリンターで作製した。この電極を使うことで、NIBの電極面積当たり容量を従来の4倍に引き上げ、「世界最高レベルの性能を達成した」(研究チーム)。性能面でリチウムイオン電池に匹敵するナトリウムイオン電池の開発が期待できるという。

<研究の概要>
キーワードナトリウムイオン2次電池、カーボンマイクロラティス、ハードカーボン、光造形方式、3Dプリンター
関連研究者勝山湧斗、工藤朗、小林弘明、韓久慧、陳明偉、本間格、Richard B. Kaner
関連研究機関カリフォルニア大学ロサンゼルス校、東北大学、ジョンズホプキンス大学
関連論文掲載先Small
関連論文タイトルA 3D-printed, freestanding carbon lattice for sodium ion batteries
関連論文URLhttps://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/smll.202202277
詳細情報https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2022/07/press20220714-01-3d.html

 カーボンマイクロラティスは、3Dプリンターで作製した周期的格子構造(ラティス)を、不燃雰囲気・高温下で熱処理することで得られる炭素材料。本研究では、光造形3Dプリンターの中でも安価な液晶マスク型を採用して、連続的な3D構造を有する光硬化性樹脂の前駆体を作製し、真空下1000℃で熱処理した。その結果、設計構造を維持したまま60%収縮し、100μ~300μmの構造単位から成るカーボンマイクロラティスを得た。これを負極に用いることで、充放電特性が向上することを確認した。最も緻密な構造を有するカーボンマイクロラティスを用いた場合、従来の粉末ペレット電極と比較してNIBの電極単位面積当たり容量を4倍に高められたという。

 現在主流のリチウムイオン2次電池(LIB)は、産出地や産出量が限られているリチウムやコバルトを使用していることから、次世代の2次電池としてNIBが注目されている。今後、数値シミュレーションによるカーボンマイクロラティスの周期構造の最適化により、NIBの一層の高性能化が期待できる。加えて、光造形方式は樹脂の分子構造の改良や、他の材料との混合でハードカーボン以外の材料にも対応できる可能性がある。本研究の成果は、マイクロラティスを陽極にも用いたNIBの開発や、他の金属イオン電池に適したマイクロラティス電極の開発につながるという。

左はカーボンマイクロラティス電極の概要、右はカーボンマイクロラティス電極とペレット電極の厚膜化に伴う電極面積当たり容量の変化(出所:東北大学)
左はカーボンマイクロラティス電極の概要、右はカーボンマイクロラティス電極とペレット電極の厚膜化に伴う電極面積当たり容量の変化(出所:東北大学)
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