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 東京工業大学と山階鳥類研究所(千葉県我孫子市)の研究グループは、ペンギンの体を覆う羽毛が流体摩擦抵抗を低減させる効果があることを実験で明らかにした。従来の研究では保温効果や撥水(はっすい)効果が示唆されていたが、流体力学の観点からの調査はほとんどなかった。本研究結果を応用すれば、流速方向の変化が大きい自動車や船舶などの燃費性能向上が期待できるという。

<研究の概要>
キーワード流体力学、ペンギン、羽毛、流体摩擦抵抗、抵抗低減効果、流速方向、リブレットフィルム、燃費
関連研究者田中博人、齋藤遼輔、山崎剛史
関連研究機関東京工業大学、山階鳥類研究所
関連論文掲載先Bioinspiration & Biomimetics
関連論文タイトルFluid drag reduction by penguin-mimetic laser-ablated riblets with yaw angles
関連論文URLhttps://iopscience.iop.org/article/10.1088/1748-3190/ac7f71
詳細情報https://www.titech.ac.jp/news/2022/064696

 研究グループは、ペンギンの体表を模倣したリブレット(微小な列状の凹凸)フィルムを製作し、流体摩擦抵抗を低減する効果を明らかにした。形状計測に基づき、リブ断面が台形の模倣リブレットを設計。紫外線レーザースキャン加工でフィルム上に製作した。このフィルムを平板に貼り付け、水流中で抵抗を計測した結果、平滑なフィルムを貼った場合と比較して抵抗が最大2%低減した。この抵抗低減効果は、リブ配向が流速方向に対して平行な場合よりも、角度を15度つけた場合の方が向上した。つまり抵抗低減効果は流速方向の変化に強いことが分かった。

 本研究のペンギン模倣台形リブレットは、従来の板・鋸歯(のこば、きょし)リブレットに比べて最大抵抗低減率が小さいものの、流速方向の変化には強い。流速方向が変化する自動車、船舶、水中・空中ドローン、水着などの抵抗低減への応用が期待できるという。研究グループによれば、実際のペンギンの羽毛は一つひとつ分離しており、遊泳中に動く可能性がある。ペンギンが体表に塗布する撥水性油脂の影響や、太く短い紡錘体状の体形の影響も未知である。今後はこれらの特徴を模倣リブレットに取り入れて新たな特性を探究する。

背中の毛の間隔の計測に用いたキングペンギン、フンボルトペンギン、コガタペンギンの剥製標本。山階鳥類研究所が所蔵しているもの(出所:東京工業大学、山階鳥類研究所)
背中の毛の間隔の計測に用いたキングペンギン、フンボルトペンギン、コガタペンギンの剥製標本。山階鳥類研究所が所蔵しているもの(出所:東京工業大学、山階鳥類研究所)
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リブレットの断面模式図。Aは台形断面のペンギン模倣リブレット、Bは従来の板リブレット、Cは従来の鋸歯リブレット(出所:東京工業大学、山階鳥類研究所)
リブレットの断面模式図。Aは台形断面のペンギン模倣リブレット、Bは従来の板リブレット、Cは従来の鋸歯リブレット(出所:東京工業大学、山階鳥類研究所)
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