全595文字
PR

 名古屋工業大学、名古屋大学、住重アテックス(愛媛県西条市)の研究チームは、炭化ケイ素(SiC)パワー半導体を劣化させる結晶欠陥の拡張を水素イオンの注入によって抑制した。半導体製造プロセスの前に水素イオンを注入することで、電気特性を劣化させずに積層欠陥の拡張を抑制できることを発見した。SiCパワー半導体の長期信頼性を高められるという。

<研究の概要>
キーワードパワー半導体、SiC、炭化ケイ素、水素イオン、積層欠陥、結晶欠陥、バイポーラ劣化、高温アニール
関連研究者加藤正史、原田俊太、坂根仁
関連研究機関名古屋工業大学大学院、名古屋大学
関連企業住重アテックス
関連論文掲載先Scientific Reports
関連論文タイトルSuppression of stacking fault expansion in a 4H-SiC epitaxial layer by proton irradiation
関連論文URLhttps://www.nature.com/articles/s41598-022-17060-y
詳細情報https://www.nitech.ac.jp/news/press/2022/9889.html

 水素イオン注入をSiCパワー半導体の製造プロセス間あるいはプロセス後に実施すると、結晶欠陥の拡張は防げるが、水素イオン注入による結晶ダメージによりSiCパワー半導体の電気特性が悪くなる。研究グループは、SiCパワー半導体の製造プロセスにおける、アルミニウムイオン注入後に結晶ダメージを回復するための高温アニールプロセスに着目した。高温アニールよりも前に水素イオンを注入すれば、高温亜ニーズによって水素イオン注入による結晶ダメージも回復し、水素イオン注入のないものと同じ電気特性が得られることが分かった。加えて、高温アニール後でも結晶欠陥の拡張を防ぐ部分転位固着効果が保たれることを確認した。積層欠陥の拡張とそれに伴う電気抵抗の増大はバイポーラ劣化と呼ばれ、SiCパワー半導体の長期信頼性を高めるうえでの課題となっていた。

 研究チームは今後、性能と長期信頼性を両立できる最適条件を見いだす研究開発を続ける。SiCパワー半導体メーカーへの技術提供を目指す。

長時間の通電劣化試験後のダイオード電極窓から観察したEL像。左は水素イオン注入のないダイオードで拡張した積層欠陥(結晶欠陥)が見られる。右は水素イオン注入のあるダイオード(出所:名古屋工業大学)
長時間の通電劣化試験後のダイオード電極窓から観察したEL像。左は水素イオン注入のないダイオードで拡張した積層欠陥(結晶欠陥)が見られる。右は水素イオン注入のあるダイオード(出所:名古屋工業大学)
[画像のクリックで拡大表示]