東京工業大学の中本高道氏らの研究チームは、所望の「匂い印象」に対応するセンシングデータ(本研究では質量分析器で計測したマススペクトル)を推定する手法を開発した。匂い印象からマススペクトルが得られれば、対応する匂いを手軽に合成・創作できるようになる。
キーワード | 匂い印象、センシングデータ、マススペクトル、嗅覚ディスプレー |
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関連研究者 | 中本高道、長谷部大祐 |
関連研究機関 | 東京工業大学 |
関連論文掲載先 | PLOS ONE |
関連論文タイトル | Exploration of sensing data to realize intended odor impression using mass spectrum of odor mixture |
関連論文URL | https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0273011 |
詳細情報 | https://www.titech.ac.jp/news/2022/064747 |
匂い印象とは、ある匂いについて「甘い」「ローズ臭」といった複数項目の官能スコアで表現したものである。研究グループは今回、マススペクトルから匂い印象を求めるモデルをベースにして、出力(匂い印象)から入力(マススペクトル)を推定する逆問題を解く手法を提案した。10種類の香気物質について匂い印象を与えたところ、マススペクトルをほぼ正しく推定できることが分かった。この手法を使えば、マススペクトルに対応する匂いの「レシピ」が得られ、所望の匂いを手軽につくり出せるようになる。匂い印象からマススペクトルを直接予測する写像関数を求めなかったのは、匂い印象からマススペクトルへの写像が1対1写像にならないからである。
現在は数値計算による研究にとどまっており、研究グループは次の段階として、実際に匂いを合成し、人が匂いを嗅いで確かめる必要があると考えている。さらに先の段階として、人に匂いを提示するデバイス「嗅覚ディスプレー」の実現を構想している。嗅覚ディスプレーがあれば、匂いの合成・創作をもっと効率化できるからである。AIスピーカーが人の音声による指示を受けてさまざまなタスクをこなすように、AI嗅覚ディスプレーが実現すれば「もっと甘い匂いにして」というような人の要求を満たす匂いを瞬時に発生させることが可能になるという。