立命館大学大学院の辻淳喜氏らの研究チームは、チタン合金の高効率かつ超精密研磨技術を開発した。1nm以下の表面粗さを実現し、従来技術に比べて2倍以上の加工効率を達成した。航空宇宙部品や生体材料などチタン合金を使う部材の高機能化と低コスト化が期待できる。
キーワード | チタン合金、研磨技術、平滑化、電気分解、電解、酸化膜、除去、結晶粒界段差、耐食性、生体適合性、疲労強度 |
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関連研究者 | 辻淳喜、村田順二、滝沢優 |
関連研究機関 | 立命館大学大学院 |
関連論文掲載先 | Surfaces and Interfaces |
関連論文タイトル | Improvement in the polishing characteristics of titanium-based materials using electrochemical mechanical polishing |
関連論文URL | https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S2468023022007490 |
詳細情報 | https://www.ritsumei.ac.jp/file.jsp?id=556301&f=.pdf |
研究チームは、電気分解(電解)によってチタン合金の表面が変質することを利用した研磨法に着目した。チタン合金の表面を電解によって酸化膜に変化させてから、酸化膜を研磨粒子により除去する。酸化と除去を繰り返すことで平滑なチタン表面を得られる。電解を利用することによって、水と研磨粒子から成る研磨液だけでチタン合金の研磨を可能にした。加工速度は従来技術と比較して最大で117%向上することが分かった。加工前に300nm程度だった表面粗さを約20分間の研磨で1nm以下にまで低減でき、最終的には0.5nmの極めて平滑な表面を得られた。従来技術による研磨では結晶粒界段差による表面の凹凸が確認され、表面粗さが2~3nm程度にとどまっていた。本研究では、X線分析により加工条件や加工メカニズムも明らかにした。
研究チームによれば、チタン系材料は航空宇宙分野ではガスタービンエンジンの材料、医療分野ではインプラントの材料などと応用が進んでいる。しかし、高機能機器には平滑な表面が必要で、その加工の難しさによるコスト高が飛躍的な普及の妨げになっていた。本研究成果では、短い加工時間で結晶粒界段差による凹凸を抑制し、優れた表面精度を達成できる。加工コストの低減につながるほか、薬液を必要とせず研磨材の使用量も削減できるため、環境負荷の低減も期待できる。