東京大学、理化学研究所、NTTの共同研究グループは、最先端の商用光通信技術を光量子分野に適用させる新技術を開発した。これにより、光通信用検出器を用いて43GHzリアルタイム量子信号測定に成功した。超高速光通信技術の1つである波長分割多重化技術(WDM)と組み合わせることで、マルチコア光量子コンピューターを構成することができ、スーパー量子コンピューターの実現が期待できるという。
キーワード | 超高速光通信技術、光量子、量子コンピューター、波長分割多重化技術、WDM、光パラメトリック増幅器、直接接合型周期分極反転ニオブ酸リチウム、スクイーズド光 |
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関連研究者 | 古澤明 |
関連研究機関 | 東京大学、理化学研究所、科学技術振興機構(JST) |
関連企業 | NTT |
関連論文掲載先 | Applied Physics Letters |
関連論文タイトル | Toward a multi-core ultra-fast optical quantum processor: 43-GHz bandwidth real-time amplitude measurement of 5-dB squeezed light using modularized optical parametric amplifier with 5G technology |
関連論文URL | https://aip.scitation.org/doi/10.1063/5.0137641 |
詳細情報 | https://www.t.u-tokyo.ac.jp/press/pr2023-03-07-001 |
研究グループは、光パラメトリック増幅器により光量子情報を保持したまま光を増幅し、超高速光通信テクノロジーを光量子分野に適用する新手法を開発した。本研究では一例として、光パラメトリック増幅後に市販の高速通信用ディテクターを用いて、高速に信号を測定する手法を提案した。この技術では、光量子状態を光損失の影響を受けない「古典的な」レベルまで増幅することで、光通信テクノロジーを光量子分野に適用可能とする。実験では、NTTで開発を進めてきた高い増幅率(約3000倍)と小さい信号対雑音指数(約20%)を有する、直接接合型周期分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN)導波路による光パラメトリック増幅器を用いた。光通信用43GHzディテクターとリアルタイムオシロスコープを用いてスクイーズド光の振幅測定をしたところ、電圧振幅値のヒストグラムにより、量子ノイズ圧縮率が約65%であることが分かった。この結果は光量子コンピューティングの動作に必要最低限な量子ノイズ圧縮(60%)を超えており、従来技術と比べて1000倍以上のクロック周波数で動作可能な高速量子演算が実現できることを意味する。
研究グループによれば、今回の結果は超高速光通信技術と光量子コンピューター技術の融合により100GHz超の帯域での高速な光量子演算が可能になることを示す。超高速光通信技術と光量子プロセッサーを融合させることが可能になり、光量子コンピューターの開発を大きく加速させるという。将来的には、WDMを用いることで、量子プロセッサーのマルチコア化が可能となる。今後これらの技術により、THzオーダーの帯域を最大限に活用した100GHz帯域・100マルチコアのスーパー量子コンピューターの実現を目指すという。