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 2022年1月、LEDデスクスタンド(以下LEDスタンド)を使っていたユーザーから、プラスチック樹脂のベース(台座部分)の一部が高温で溶けて変形し、置いてあった畳が焦げたとの連絡が、製造元のパナソニックに入った。

 その後、同年2~3月にかけてやはり同じ製品のベースの一部が溶ける事故が立て続けに3件発生。同社が調査したところ、静電気を帯びたユーザーが金属めっき部分に触れた際に、静電気が製品内部の回路基板へと伝わり、集積回路(IC)が故障したために発熱したとの結論に至った。同社は、同年5月16日に当該製品のリコールを発表した(図1)。

図1 リコール対象のLEDデスクスタンド
図1 リコール対象のLEDデスクスタンド
ベース(台座)の底部分が発熱して溶けた。写真はホワイト仕上げの「SQ-LD420-W」。ダークグレーメタリック仕上げの「SQ-LD420-K」と合わせて約3.9万台がリコール対象となった。(写真:パナソニックの写真を基に日経クロステックが加工)
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 詳細は後述するが、金属めっき部分と内部の回路基板との距離に、ばらつきがあったという。この距離が近い場合に静電気への耐性が低くなることを、開発時の試験で見抜けなかった。

約3.9万台をリコール

 リコールの対象となったのは、パナソニックが2021年6月~2022年5月の約1年間に販売した「SQ-LD420-K」と「SQ-LD420-W」。回収対象は合計3万8570台に及ぶ。同社は既に両製品の生産を終了しており、購入した顧客に対しては、対策を講じた製品との無償交換を実施している。

 このLEDスタンドは、ACアダプターを接続して電源を供給するタイプの製品で、寸法は幅38.1cm×高さ41.9cm、質量は1.1kg、消費電力は7.1W。ベース上面のタッチスイッチに触れると、電源や明るさの設定、動作タイマーなどを操作できる。リコール直前、家電量販店での店頭価格は1万2000円前後(税込み)だった。

 最初の事故が判明したのは2022年1月8日。神奈川県のユーザーから同社に対し、前述のようにベースが溶けて変形し、LEDスタンドを置いていた畳が焦げたとの連絡があった。ベースは「上蓋」「飾り枠」「下蓋」の3つのプラスチック樹脂部品から成る(図2)。このうち下蓋が高温で溶けた。

図2 ベースの構成
図2 ベースの構成
高温で溶けたのはプラスチック樹脂製の下蓋。ベース内部にはLEDデスクスタンドの回路基板がある。(出所:パナソニックの写真を基に日経クロステックが加工)
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 その後の3件の不具合報告はいずれも神奈川県のユーザーからで、同じくベースが高温で溶けていた。幸い人的被害はなかった。

LEDの電流制御ICに発熱痕

 パナソニックが問題の製品を調査したところ、出火の痕跡は無かったものの、回路基板に実装されたLED制御用のICに、発熱の痕跡が見つかった。この発熱によってベース下蓋が溶けて変形し、さらにLEDスタンドの設置床面を焦がしたと推測された。

 当初、同社は原因として静電気ではなく、ICの偶発的な初期不良を疑っていた。「設計的にICに過電流や過電圧が加わらない回路構成だった」(同社)からだ。同社は過電圧試験や短絡・開放試験といった、ICの異常発熱を再現する実験を通じて分析を進めたという。

 詳しい原因が見えたのは、調査開始から約3週間後のことだった。静電気試験を在庫品で実施したところ、同社が設けた印加電圧10kVという基準以下でICが故障する場合があった。ICが“一定の抵抗値を持った状態”で通電を継続した場合に異常発熱し、ベース下蓋が溶けて変形する事象を再現できたという。

 同社によると、ICが一定の抵抗値を持った状態とは、大まかに言えば、電源端子とGND端子の間が数Ω~数百Ωの低い抵抗値を示す状態を指す。オープン(開放)でもショート(短絡)でもない、いわゆる「半短絡故障」と呼ぶ状態だ。LEDスタンドが点灯しない一方、ACアダプターの保護機能も動作しないという不安定な挙動を示す。

 ICが半短絡故障に陥った場合、発熱が数時間続いた後に半導体素子が焼損して、最終的には電流が流れないオープン状態になるという。ちなみに、「LEDスタンドが正常作動している場合のICの抵抗値は数百kΩ~数MΩ」(同社)である。