宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2022年10月18日、文部科学省・宇宙開発利用部会に、同年10月12日に発生した「イプシロン」ロケット6号機打ち上げ失敗に関する事故調査の中間報告を提出した。イプシロン6号機はロケット第2段の燃焼終了後、第3段分離と点火前の姿勢制御がうまくいかなかったため、地上から指令破壊コマンドを送信して飛行を中断し打ち上げが失敗に終わったと判明した。
中間報告によると、第2段が搭載している小推力の液体ロケットエンジンを使った姿勢制御系「RCS(Reaction Control System)」の配管末端の圧力が規定通りに上昇していなかった。つまりRCSに推進剤が流れなかったのだ。
第3段点火に向けたRCSによる姿勢制御は正常に行われず、ロケットの姿勢が崩れた。姿勢が崩れて第3段の正常な飛行が不可能になったことから、指令破壊コマンドの送信による飛行中断に至った。
JAXAは、[1]RCSの配管系に安全のために組み込んだ火薬で動作させるバルブ「パイロ弁」が故障して開かなかった、[2]パイロ弁を動作させる電気系の配線に問題があった、[3]配管そのものが何らかの理由で閉塞していた——の3つの可能性があるとしている。
第3段は軽量化のためにスピンによる姿勢安定を採用
全段固体推進剤を使用する3段式ロケットのイプシロンは、第1/2段と第3段とで姿勢制御の方法が異なる。第1段、第2段はロケットノズルの首振りで、ヨー軸(進行方向を左右に振る軸)とピッチ軸(同上下に振る軸)の姿勢を、小型の噴射装置でロール軸(左右の傾き)回りの姿勢を制御する。
この第2段の小型の噴射装置がRCSだ。RCSは、第2段噴射の間は、ロール軸回りの制御のみを担当し、第2段燃焼終了後は、ヨー・ピッチ軸の姿勢制御も行う。