長く使い続けたいサーバーのOSには、5年間の長期サポート版である「Ubuntu Server 22.04 LTS」が向いている。これからサーバーを構築したい人や勉強したい人のために、OSのインストール方法や基本的なサーバー構築の方法などを紹介する。
在宅勤務が定着する中、「オンラインストレージ」「ビデオ会議」「チャットツール」の三つは、ほかのメンバーと共同作業するうえで必須のツールになっています。三つのツールは全部、自宅のサーバーにも導入できます。
Step3では、Ubuntu Server 22.04 LTSをインストールしたPCを使って、「オンラインストレージ」「ビデオ会議」「チャットツール」を提供できるようにしてみましょう。
なお、インストールや設定を簡略化するため、アプリはそれぞれ専用のサーバーにインストールするものとします。また、Ubuntu Server 22.04 LTSをインストールしたPCはインターネットに公開されていて、インターネットからアクセスできるように設定されているものとします*1。
さらに、NAT環境下ではポートが重複してしまうため、紹介する三つのアプリは同時には動かせません。実際には、「リバースプロキシー」などの仕組みを使うことで同時に動かすことはできますが、高度なスキルが必要なため、本特集では紹介しません。
1.オンラインストレージ
Nextcloud
「Nextcloud」は、セルフホストできる共同作業のプラットフォームです。自宅のサーバーで「Dropbox」のようなファイル共有サービスを提供できるほか、さまざまな便利機能を持っています。家の中で個人利用するだけでも便利ですし、セキュリティーポリシーなどの理由でクラウドサービスを利用できない企業でも、非常に便利なアプリと言えるでしょう。使用するポートはHTTPとHTTPSです。自宅で利用する場合は、このポートを開放してください。
NextcloudはWebサーバー、PHP、データベースサーバー、キャッシュサーバーなど、数多くのコンポーネントで構成されるため、手動でのインストール作業は非常に複雑です。けれども、Snapパッケージを利用すれば簡単に使い始められます。インストールには次のコマンドを実行してください。
続いてNextcloudの管理者ユーザーを作成します。次のコマンドを実行してください。
Nextcloudへのアクセスに使用するドメイン(nextcloud.example.comなど)を設定します。ドメインを使用しないときはIPアドレスを指定することも可能です。
SSL証明書を取得し、HTTPSを有効にします。図1を参考にして作業を進めてください。なお、SSL証明書の取得にはインターネットからアクセスできるドメインが必要です。
以上でサーバー側の準備は完了です。Webブラウザーを起動し、NextcloudのドメインまたはIPアドレスにアクセスするとログイン画面が表示されます。ログインするとNextcloudに保存してあるファイルが一覧表示されます。PC上のファイルをWebブラウザーから対話的にアップロード/ダウンロードできます(図2)。
専用のクライアントアプリを使えば、PCのローカルのフォルダーとNextcloud上のフォルダーを自動的に同期させることができます。専用クライアントはWindows/macOS/Linux/Android/iOSに対応しています。Ubuntu向けにはSnapやAppImageのパッケージが用意されています。ここではUbuntu Japanese Teamのあわしろいくや氏が提供しているDebパッケージのインストール方法を紹介します。
初回起動時に設定用のウィザードが表示されます(図3)。画面の指示に従って進めてください*2。