ダイキン工業は、空気や空間に新たな機能や価値を付与する「空気の価値化」に取り組んでいる。空気質を調節して快適さや機能性を保証することで、空調機器の売り切りとは異なる新しいビジネスモデルの構築を目指す。同社常務執行役員空調商品開発担当テクノロジー・イノベーションセンター長の米田裕二氏に、空気の価値化の狙いと戦略を聞いた。(聞き手は佐藤雅哉=日経クロステック)
空気の価値化とは何ですか。
当社は空気の価値化に取り組んでいるが、これまではあまり価値を生み出すことが得意ではなかった。価値というと難しく聞こえるかもしれないが、単純にいうと「人に喜んでいただくこと」だと思う。新しい商品やサービスで人を喜ばせ、対価を支払ってもらえる仕組みをつくることが重要だ。
一番分かりやすい例は、空気質や換気などの見える化だろう。新型コロナウイルス感染防止の観点では、ウイルスの感染経路になりうるエーロゾル(大気微粒子)が空気中にどれだけ浮遊していて、どれだけ空気を換気できているかが視覚的に分かるだけでも価値になる。当社は、空気質のセンシングや空気の流れのシミュレーションの技術開発に取り組んでいる。
花粉の季節になると空気清浄機を使う機会が増えるが、部屋のどこに空気清浄機を置けば清浄効果があるかは、空気の流れを分析すれば予測できる。空気清浄機を販売したときに、アプリで部屋の写真を撮るだけで「ここに空気清浄機をおいたら効果が大きいですよ」と提案するサービスを一緒に売れば、これも新しい価値になるだろう。