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 今や日本は多くの業界で深刻な人手不足に陥っているが、夏の行楽シーズンでにぎわう山もその1つである。現在は麓から有人ヘリコプターで山頂付近の小屋に食料や救命用具などを輸送しているが、パイロットが高齢化しているとともに、法律上、運航時には2人搭乗する必要があるため、人手不足が顕著になっている。気象条件によってフライトができない場合も多いという。

 この状況をヘリコプターと二輪車の事業で培ってきた技術を応用して解決を目指しているのが川崎重工業である。同社は二輪車「Ninja H2R」用のエンジンを搭載する無人VTOL(垂直離着陸)機「K-RACER」の開発を進めている(図1)。

図1 山岳輸送向けに開発中の無人VTOL機
図1 山岳輸送向けに開発中の無人VTOL機
川崎重工業が開発中の「K-RACER-X2」のイメージ。高度3100mに200kgのペイロードを運べ、航続距離として100kmを確保することを目指す(出所:川崎重工業)
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 ターゲットは山岳輸送で、主に荷物を高地に運べる機体を開発中だ。量産機での目標は高度3100mに200kgのペイロードを運べ、航続距離として100kmを確保することである。「山岳輸送では1個当たり200kgの燃料タンクを運ぶニーズがある。ヘリコプターだと500kgや1t(トン)の重量物を運べるが、無人VTOL機による自動運航とすることでヘリコプターと差異化する」(近未来モビリティ総括部グローバルマーケティング&セールス部課長代理の櫻井崇晴氏)戦略だという。つまり、運べるペイロードはヘリコプターより少なくなるものの、パイロット2人分の仕事を無人VTOL機で代替しようというわけだ。

 現在、試作機「K-RACER-X2」の開発を進めており、まずは高度3100mに100kgのペイロードを搬送できる機体の開発を2022年下期内に完了させる。その機体を使って改良を重ね、ペイロード200kgの搬送が可能な量産機の実現を目指す。サービス化は2026年を予定している。機体自体の販売は想定しておらず、「輸送サービスを提供する。モノ売りから脱却したい」(櫻井氏)とする。

 同社は当初、ヘリコプター型の機体に固定翼を付けた「K-RACER-X1」を開発した。この機体は固定翼によってスピードを出せるのが特徴だった。しかしその後、用途のターゲットを山岳での物資輸送に向けたため、固定翼を排除した既存のヘリコプターのような形状になった。「固定翼をなくしてペイロードを増やしたり、空気が薄い環境での浮き易さを優先したりした結果だ」(櫻井氏)としている。