トヨタ自動車が約4億米ドル(約596億円)を出資する米国の空飛ぶクルマ(eVTOL機)開発企業Joby Aviation(ジョビー・アビエーション)は2022年10月18日、国土交通省に開発中の機体について日本の航空法に基づく型式証明を申請し、受理されたと発表した。海外製空飛ぶクルマの型式証明申請の受理は初めてである。
日本において、2025年4月に開幕する「2025年日本国際博覧会」(大阪・関西万博)での空飛ぶクルマの商用運行開始を目指しており、ジョビー・アビエーションの動きも、それをにらんだものとみられる。
同社は現在、開発中の機体「S4」について、米連邦航空局(FAA)と米国における型式証明の取得に向けて審査プロセスを進めている。2023~2024年ごろに型式証明の取得を完了し、2024年ごろの商用化を目指しているとみられている。
S4は固定翼がついた推力偏向(Vectored Thrust)タイプの機体(図1)。5人乗り(パイロット1人含む)で、航続距離は約240kmとしている。
同社は既に合計で2400億円以上の資金を調達し、米Uber Technologies(ウーバーテクノロジーズ)が手塩にかけて育ててきたeVTOL機の研究開発部門を買収するなど、空飛ぶクルマ業界のリーダー的な存在になっている。業務提携するANAホールディングスも「eVTOL機で最強の存在」(未来創造室デジタル・デザイン・ラボ マネジャーの保理江裕己氏)と評する。
ジョビー・アビエーションは機体開発のみならず、米国では自ら「空飛ぶタクシー」サービスの提供を計画している。2022年5月には、「Part 135 Air Carrier Certificate」という認可を獲得したことを発表した。これは、チャーター機のような小型機によるオンデマンドの不定期便を運航する会社に対する認可である。
FAAでの証明内容の確認が主眼
日本と米国は、航空機に関する相互承認協定であるBASA(Bilateral Aviation Safety Agreement)を締結している。このため、S4に関しては1から日本の型式証明の審査プロセスを踏むのではなく、「設計国である米国の証明内容を確認する」(国土交通省)ことが主眼となる。これによって取得までの作業量や期間、コストを大幅に低減する。
国土交通省での審査をFAAでの型式証明取得後に始めるのか、取得以前に始めるのかについては「これから協議するが、審査は時間がかかるプロセスなので、FAAでの取得前に始めたい」(国土交通省)としている。