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 「聖域」として手付かずだった光伝送装置に世界同時多発で「オープン化」のメスが入る。オープン化は大手ベンダーの独占を崩し、競争を活性化する。この「ゲームチェンジ」の好機を逃すまいと積極攻勢を見せるのが富士通やNECなどの日本勢だ。日本勢は海外大手の牙城を崩すことができるか。

ROADMの分離製品群をいち早く投入した富士通

 「光伝送装置のオープン化は、ゲームチェンジをもたらす」

 富士通フォトニクスシステム事業本部光ソリューション事業部シニアアーキテクトの長嶺和明氏はこう力を込める。

 米AT&Tなどが中心となって設立された「Open ROADM MSA」、米Meta Platforms(Meta、旧Facebook)を中心とした「Telecom Infra Project(TIP)」、そしてNTTが推進する「IOWN構想」の仕様を策定する「IOWN Global Forum」といった団体で、光伝送装置のオープン化やディスアグリゲーション(機能分離)の動きが世界同時多発的に進行している。

 光伝送装置の市場は、これまで性能競争を重視し、シングルベンダーによる一気通貫のソリューションが求められた。そのため、異なるベンダーの機器による相互接続が難しかった。ここにオープン化やディスアグリゲーションのメスを入れることで、ベンダーロックイン(ベンダーによる囲い込み)を脱却し、適材適所で柔軟に機器を組み合わせられるようにするのが、これらの団体が目指す方向だ。競争を活性化する期待がある。

 富士通やNECなどの国内ベンダーは、オープン化をビジネス拡大の好機として捉えている。日本勢は日本国内でこそシェアは高いものの、海外市場では中国・華為技術(ファーウェイ)や米Ciena(シエナ)、フィンランドのNokia(ノキア)といったグローバルベンダーの後塵(こうじん)を拝しているからだ。

 「積極的に光伝送装置のオープン化を図り、海外でビジネスを伸ばしていくというのがNECの立ち位置だ」とNECネットワークソリューション事業部門フォトニックシステム開発統括部長の佐藤壮氏は語る。日本勢は光伝送装置のオープン化の動きを千載一遇のチャンスと捉えている。

 富士通は、光伝送装置のオープン化の動きにいち早く対応する。同社はAT&Tと並び、Open ROADM MSAの創立メンバーだ。同団体が進める光伝送装置の機能分離に基づいた製品群を、同社はいち早く市場に投入した。

 具体的には、光伝送装置である「ROADM(Reconfigurable Optical Add/Drop Multiplexer)」を、機能ごとに分離した製品群「1FINITY」を、2015年後半から市場に投入している。

図1 ROADMのトランスポンダー機能を分離した、富士通「1FINITY T500」
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図1 ROADMのトランスポンダー機能を分離した、富士通「1FINITY T500」
(出所:富士通)
図2 ROADMのWDM機能を分離した富士通「1FINITY L110」
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図2 ROADMのWDM機能を分離した富士通「1FINITY L110」
(出所:富士通)

 波長分割多重であるWDM(Wavelength Division Multiplexing)機能や、光信号と電気信号を変換するトランシーバーを備えた「トランスポンダー」といった機能を分離し、それぞれ1Uサイズの装置として用意した(図1、図2)。オープン仕様に基づいているため、他社装置との相互接続も可能という。さらに「Virtuora NC」と呼ぶネットワークインフラを制御できるソフトウエア製品も用意し、こちらもマルチベンダーの機器制御にも対応する。

 富士通は、TIPやOpen ROADM MSAといった団体における実証実験でも存在感を見せている。例えばTIPが2020年10月から2021年5月にかけて実施した「CANDI」と呼ぶ光伝送装置の実証において、富士通はネットワーク制御のためのコントローラー(Virtuora NC)と、オープン仕様に基づいたトランスポンダー(1FINITY T600)を提供した。独ADVA Optical NetworkingのOLS(Optical Line System)や米IP InfusionのネットワークOSを組み合わせ、マルチベンダー環境におけるエンド・ツー・エンドのサービス運用を実証したという。

 富士通は、これらの活動で得た知見を生かし、NTTがIOWN構想の先兵として2022年度にも実装を始める通信基盤「APN(All Photonics Network)」向けの製品として貢献していきたいという。

 NTTはIOWN Global Forumを通じて2022年1月、APNのアーキテクチャーを「Open APN」という名称で公表した。Open ROADM MSAが提案するROADMの分離モデルを活用し、ユーザー拠点近くまで機能を伸ばすというアーキテクチャーだ。具体的にはROADMにおける光スイッチや合分波機能を「APN-I」や「APN-G」として定義。トランスポンダーに相当する機能を「APN-T」として、ユーザー拠点近くまで延伸する。

 富士通はROADMを機能分離した1FINITYの製品群で、APN-IやAPN-G、APN-TといったOpen APN仕様に基づいた機能を実現できるという。