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 延べ8年8カ月に及んだ安倍晋三政権。特に第2次安倍内閣以降の7年8カ月で同政権が建設産業にもたらした影響は少なくない。その一端を振り返ってみる。

 安倍氏の掲げた政策で最も有名なものはアベノミクスだろう。この政策を実現するための3本の矢と位置付けたのが、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」。そのうちの1本である「機動的な財政政策」を代表する施策が国土強靱化だ。

2018年6月5日に開催された第7回国土強靱化推進本部で発言する安倍氏(手前から2人目)(写真:首相官邸)
2018年6月5日に開催された第7回国土強靱化推進本部で発言する安倍氏(手前から2人目)(写真:首相官邸)
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 国土強靱化とは、巨大な災害や大規模な事故が発生したとしても、国土や経済が致命的な被害を負わないようにし、被害を受けた状態から速やかに回復できるようにすること。安倍氏は、2012年12月に第2次安倍内閣を発足させた際に、古屋圭司氏を初代国土強靱化担当大臣に任命。新しい国づくりに対する強い姿勢を示した。

 翌13年1月には内閣官房に「国土強靱化推進室」を設置した。同年2月、通常国会における施政方針演説で、様々なリスクにさらされる国民の生命と財産を断固として守る 「強靱な国づくり」が急務と安倍氏は言及。そして、こう続けた。「命を守るための『国土強靱化』が焦眉の急です。首都直下型地震や南海トラフ地震など、大規模な自然災害への備えも急がなければなりません。徹底した防災・減災対策、老朽化対策を進め、国民の安全を守ります」

 国土強靱化の政策推進に当たっては、この考えを提唱した京都大学大学院の藤井聡教授を内閣官房参与に迎えた。13年からは国土強靱化担当大臣の下に設置したナショナル・レジリエンス(防災・減災)懇談会を開催。藤井氏を座長に据え、国土強靱化を実現する施策をまとめている。こうした議論と歩調を合わせて、13年12月には議員立法による国土強靱化基本法が成立。翌14年6月には国土強靱化基本計画が閣議決定された。

国土強靱化基本法は、その後の防災対策などを推進する基盤となった
国土強靱化基本法は、その後の防災対策などを推進する基盤となった
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 同法の成立後、公共事業では国土強靱化を図るための防災事業が目立つようになった。公共事業を伴う国土強靱化を推進してきた印象から、安倍政権下では公共事業投資が大幅に増加したと考える人は珍しくない。しかし、現実は異なる。少なくとも安倍氏が首相に返り咲いた直後の予算を除けば、安倍政権下における当初予算の公共事業関係費は抑制的であった。以下でその数字を見ていこう。