安倍晋三元首相が日本の産業界に残したものの1つに「自動運転」が挙げられるだろう。当初、自動運転の開発・実証は、欧米が先行し、日本は遅れていた。クルマは人間が運転するもので、システム主導で運転することは想定していなかったためだ。各種法律や基準が策定されていなかった。欧米が規制緩和や先進技術で公道の実験走行を進める中、日本は静観していた。
潮目が変わったのは、安倍氏が首相に就任した翌年となる2013年。政府は、実質規制を緩和し、自動運転車の実験車でも公道を走れるようナンバープレートを発行した。同年11月には、国会議事堂周辺の一般道を、各社(トヨタ自動車・日産自動車・ホンダ)の自動運転車が実験走行した。助手席に同乗した安倍氏は「日本の最先端のクルマだ、夢がある」とコメントし、中長期的に日本が自動運転で世界の先頭に立つべきであるという意思を示した。