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 2021年4月に欧州委員会が公表した「欧州連合(EU)AI(人工知能)規則案」。AI全般の活用を対象とした世界初の法律になる見通しで、施行に向けて着々と進んでいるという。2024年にも全面施行になる可能性がある。日本にはAI全般の利活用における法的な拘束力をもったルールがまだない。米国は新法を作成したり、新法がない分野のAIについては現行の法律を改正したりするなどして、雇用や消費者保護など特定の分野におけるAIの利活用に対する制限を設けている。

 AIのサービス自体や推論結果などのアウトプットをEUで提供する場合が対象で、日本のプロバイダーもEUでサービスなどを提供する際にはAI規則案が適用される。違反した企業には制裁金として、最大3000万ユーロか、もしくは前年度の全世界売上総額の最大6%を科す。日本の企業にも適用される可能性がある。

 渥美坂井法律事務所・外国法共同事業の三部裕幸弁護士は「EUのAI規則案における一番の特徴はリスクベースアプローチだ」と話す。AI規則案はリスクに応じて禁止されるAIシステム、ハイリスクAIシステム、透明性義務を伴うAIシステム、最小限リスクのAIシステムという4つの分類に区分している。このうちハイリスクAIシステムと透明性義務を伴うAIシステムに分類されるAIシステムを提供する場合、プロバイダーにそれぞれの区分に応じた義務が課される。

EUのAI規則案におけるリスクに応じたAIシステムの分類。「ハイリスクAIシステム」「透明性義務を伴うAIシステム」自体やそのサービス・アウトプットをEUで提供する場合、プロバイダーなどの事業者にそれぞれの区分で定められた義務が発生する
EUのAI規則案におけるリスクに応じたAIシステムの分類。「ハイリスクAIシステム」「透明性義務を伴うAIシステム」自体やそのサービス・アウトプットをEUで提供する場合、プロバイダーなどの事業者にそれぞれの区分で定められた義務が発生する
(日経クロステックが作成)
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