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 樹脂分野の世界の動向をリードする展示会「K 2022」(ドイツ・デュッセルドルフ)。今後、樹脂分野はどのような方向に進むのか。射出成形・金型技術の第一人者であり、長年、Kに参加し続けて欧米企業の動向に詳しい小松技術士事務所所長・ものづくり名人の小松道男氏に聞いた。

 欧州ではバイオプラスチック(バイオプラ)の開発が盛んで、世界が直面する環境問題への関心の高さが表れている。石油由来樹脂を減らすことについても大きな社会課題として真正面から捉えている様子がうかがえる。

小松技術士事務所所長・ものづくり名人の小松道男氏
小松技術士事務所所長・ものづくり名人の小松道男氏
(写真:日経クロステック)
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 一方でウクライナ危機が勃発して以来、欧州は大きく揺れている。電気代が1.4~2倍に高騰する中で冬を迎えて、石油やガスの供給問題を前に大混乱に陥った。この冬には暖房のために石油やガスが必要で、それでは脱炭素は進まない。この夏にも結論をどう導くかで欧州は相当悩んでいた。

 だが、今回のKを見ると、確かに来場者は減ったものの、環境問題を解決するためにどうしたらよいかを真剣に考える人が増えたように感じる。主催者も「来場者の質が上がった」と語っていた。環境負荷軽減に対して明確な意志を持った人たちが集まったというのが実感だ。

 事実、バイオプラへの期待は一層高まっている。良いほうに予想が外れたと言うべきか、さまざまなバイオプラの応用事例がドイツやフランス、米国の企業から出展されていた。決して掛け声や宣伝のためではなく、普及に向けて本気で一歩ずつ進んでいると感じる。確かに、会場では多くの企業が「循環経済(サーキュラーエコノミー)」の文字を前面に押し出しており、中には疑問符が付くのもある。それでも、レベルの高いバイオプラや生分解性技術、リサイクル技術が多く展示されていた。動きは決して速いとは言えないが、確実に進化していることを確認できた。

欧州に対する日本のチャンスと課題

 今回のKで分かった注目すべき動向の1つは、樹脂のリサイクルの推進だ。現在は石油由来樹脂が9割以上を占めており、使用済み後は焼却処分によって大量の二酸化炭素(CO2)を排出している。これを止めるために、樹脂のリサイクルを増やそうという動きが欧州で活発になってきた。

欧州のリーディングカンパニーが推進する樹脂のリサイクル
欧州のリーディングカンパニーが推進する樹脂のリサイクル
(写真:日経クロステック)
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 樹脂を効率的に高品質でリサイクルして再び使用できるようにするには、樹脂を分別する機械や、材質を識別するデジタル技術が必要となる。品質をいかに保証して管理するかも大切だ。樹脂を分別・分解しやすいような構造やデザインを設計段階から考えておくといった取り組みも必須となるだろう。リサイクル技術を高めるには、そうした合わせ技の視点が重要になる。これは新たなビジネスチャンスとも言えるだろう。