図1は、日精樹脂工業が開発した100%ポリ乳酸(PLA)でできたボトル。世界最大の樹脂・ゴムの展示会「K2022」(ドイツ・デュッセルドルフ、2022年10月19~26日)に同社が出展したものだ。容量は500mLで肉厚は0.2mm程度。電動式射出成形機を使い、インジェクションブロー成形で加工した。PLAを使ったインジェクションブロー成形は「世界で初めて」(同社)。ブロー成形を使わずに、1台の射出成形機でボトルにまで仕上げる。
まず、溶融したペレットを金型内に射出してパリソン(プリフォーム)を製作する(図2)。続いて、このパリソンをスライドさせ、別の金型内で空気を入れて膨らませてボトルに成形する。パリソンを膨らませる空気には、通常の工場にある圧縮空気を使うため、特別な高圧ガスを用意する必要はない。ラベルにもPLA製シートを使い、インモールドラベリング(インサート成形)を施した。ラベルの印刷にも植物由来のインクを使用したため、このボトルは100%の植物製である。
PLAは加工しにくく、安定して膨らませるのが難しい。最初は破れて全く膨らまないところから開発はスタートしたが、膨らませるにはパリソンを精密に成形しなければならないことを突き止めた。そこから温度管理と樹脂の流し方、樹脂の改質などの工夫によって実現した。開発には2年ほどを費やしたという。
日精樹脂工業は100%植物由来のカトラリーも開発した(図3)。PLAに木材の超微細粉末を10質量%含有させた材料を使って成形している。廃材である長野県の間伐材(杉や松など)を生かし、材料コストも抑えた。「ドイツの食品衛生法をクリアした。生分解性を持つため、仮にピクニックなどで山から持ち帰り忘れても環境負荷を抑えられる」(同社)という。
ホットランナーシステムを手掛けるカナダMold-Masters(モールドマスターズ)が展示したのは、同システムを使って成形した容器だ(図4)。2種類の樹脂を使うコインジェクション成形で造ったもの。表面を覆うスキン樹脂にポリエチレンテレフタレート(PET、白色の部分)を、心材となるコア層にはエチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH、濃いグレー色の部分)を採用した。