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 政府がデータセンター(DC)の立地を日本中に分散する取り組みに力を入れ始めた。2022年6月に閣議決定された「デジタル田園都市国家構想基本方針」にもDC整備を盛り込み、地方でのDC建設や海底ケーブル建設へ1000億円の補助金を支出する。関東にDCが集中することへの懸念が背景にある。

 クラウドサービスの利用増加にともない、関東や関西では2019年ごろからDCの建設ラッシュが続いている。「DCを設計できる人が全然足りない状況になっているようだ。おそらく今後は(DCを)運用する人も足りなくなるだろう」(IDC JapanでDC市場を担当するITサービスリサーチマネージャーの伊藤未明氏)。

 DCは日本の各地にあるが、特に多く立地しているのが東京圏だ。2018年度の時点で、棟数ベースでは約35%、サーバールームの面積ベースでは約60%が関東に集中している。

データセンターの地域別の立地状況(2018年時点)
データセンターの地域別の立地状況(2018年時点)
(出所:日本政策投資銀行)
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 DCが東京圏に多いのは、都心にあるインターネットエクスチェンジ(IX)やユーザー企業の拠点に近いからだ。通信環境が整っているので、ユーザー企業の拠点とも専用線などで接続しやすい。トラブルが発生した場合などに、担当者が短時間で駆けつけられるという利点もある。

災害などのリスクを懸念する声も

 こうした東京圏への一極集中を懸念する声も上がっている。

 経済産業省と総務省は2021年10月から「デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合」を開催し、有識者や業界関係者を集めてDCに関する政策を検討している。2022年1月に同会合の中間取りまとめを公表した。

 中間取りまとめでは、DCが東京圏に一極集中している問題点を挙げた。1つは、東京圏で大規模な災害が発生した場合のリスクだ。DC自体は地盤が強固な場所に設置されることが多く地震の被害は受けにくい。しかし、電力網や通信網の断絶などによってDCの機能が損なわれる恐れがある。

 データを処理するDCが東京圏に集中しているので、被災した東京圏だけでなく、地方でもデータ処理が滞る可能性が高い。つまり日本全体で通信が困難になったり、金融、医療、交通、政府・行政サービスといった重要インフラが正常に機能しなくなったりするリスクがある。

 通信ネットワークの非効率についても指摘した。地方にDCが少ないため、その地方で生み出されたデータは地方内で処理が完結しないことが多い。東京圏のDCに送信され、そこで処理された結果が地方に戻ってくるという流れだ。

 中間取りまとめではこうした問題を踏まえて「DCの分散が必要」と説明。「広域災害時において『共倒れ』とならないだけの距離を設けることが望ましい」とした。

 再生可能エネルギーを活用する観点からも、日本中の様々な場所へのDCの設置が求められるという見方も示した。サーバーなどのIT機器の高密度化や高性能化などによって、DCの消費電力は年々増加している。国内のDCで消費される電力量は、日本の総電力使用量の1~2%程度を占めるまでになっているとされる。日本データセンター協会の副理事長を務める東京大学大学院情報理工学系研究科の江崎浩教授は「DCのさらなる増加が見込まれる中、再エネを生産する地域への分散が必要になってくる」と指摘する。再エネが大量に生産される地域にDCを設ければ、国全体としてエネルギー利用を効率化できるからだ。

東京大学大学院情報理工学系研究科の江崎浩教授
東京大学大学院情報理工学系研究科の江崎浩教授
(撮影:日経クロステック)
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助成事業で地域分散を後押し

 こうした中間取りまとめの報告などを踏まえ、政府は岸田文雄政権が掲げる「デジタル田園都市国家構想」の一環として、DC立地の分散を後押しする取り組みに本腰を入れている。総務省はDC設置事業者などを対象に、計500億円を助成する事業を始めた。経産省も526億円の予算を投じて、DCの電力・通信インフラや用地の整備などを支援する。

 総務省は、2021年度補正予算で情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)を補助金執行機関(基金設置法人)とする500億円のデジタルインフラ整備基金を設置した。CIAJがこの基金を財源として対象事業を公募、採択する助成事業を2025年度まで実施する。