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 政府はデータセンター(DC)立地の分散を後押しするが、地方でのDC経営は容易ではない。行政が建設費を補助した地方DCが、わずか数年後に経営破綻するケースも過去にはあった。箱物行政に終わらせないためには、健全な経営が欠かせない。

 地方DCはどうすればうまくいくのか。ここでは3社の成功例に学ぼう。各地で大規模DCを運用して成功している、さくらインターネット、ソフトバンク傘下のIDCフロンティア、九州電力グループのQTnetだ。

石狩市で大規模なDCを運用

 さくらインターネットは東京、大阪に加えて北海道石狩市で大規模なDCを運営している。5万1448平方メートルの敷地に3棟を建設。専用サーバーなどのホスティングサービスやIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)型のクラウドサービスの基盤として活用しているほか、一部をコロケーションサービスとして提供している。3棟を合わせた延べ床面積は約2万3700平方メートルで、最大約3000ラックを収容可能だ。最終的には5棟、約6800ラックまで増設することを予定している。

さくらインターネットの「石狩データセンター」
さくらインターネットの「石狩データセンター」
(出所:さくらインターネット)
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 2022年3月時点では、サーバー設置などの物理作業を同社が代行する「リモートハウジング」やホスティングの向けとして1060ラック、大規模ハウジング(コロケーション)向けとして250ラック相当を使用。今後の需要増加に備えて、1570ラック相当の構築を準備している。

石狩データセンターの活用状況
石狩データセンターの活用状況
(出所:さくらインターネットの資料を基に作成)
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全国30カ所以上の候補から選択

 同社はもともと、都心や大阪市内で都市型のDCのみを展開していた。しかし主力の共有ホスティングや専用サーバーなどの需要が拡大するにつれ、ラックが不足するようになった。このため、他のDC事業者からの短期的なラックの調達を繰り返していたという。同社の澤村徹執行役員は「このままではいつまでたっても(ラック調達の)仕事が終わらないので、大規模なDCを調達するか建てるかの検討を2008年ごろから始めた」と説明する。

 当初は東京近郊での事業可能性を調査してみたが、まったく採算が取れないことが分かったという。東京近郊は電力や通信などのインフラが整備されている一方で、土地価格が高い。そこで目を付けたのが地方だ。

 サーバーなどの設置場所を提供するコロケーションのサービスでは、顧客企業からの物理的な距離が重要になる。トラブルが発生した場合などに、顧客企業の担当者がDCに足を運ぶケースが多いからだ。しかし同社の主力である共有ホスティングや専用サーバーのサービスでは、顧客はDCに来る機会は少ない。さくらインターネットの担当者が機器の運用保守を代行するからだ。このため、物理的な距離をあまり気にしなくてよい。

 そこで同社は全国30カ所以上の用地を検討。総合的に最も条件が良かった石狩市に設けることにした。石狩市の用地は造成済みの土地がヘクタール単位で用意されていて、特別高圧電力を引き込める。札幌市や石狩湾の海底ケーブルの陸揚げ局が近く、近隣の国道の地下には通信回線を納める情報ボックスも埋設されている。大地震や津波、液状化のリスクも低い。また、当時の市長も含めた地元の誘致への熱意も大きかったという。

 石狩市を選んだのは、北海道の冷涼な気候もある。冷涼な外気を冷房に活用すれば、空調にかかる消費電力の削減につながると考えた。実際に石狩DCでは、一般的な都市型DCに比べて約4割の消費電力を削減しているという。PUE(電力使用効率)は通年だと外気冷房のみで1.11、夏季に空調運転を行った場合でも1.21を実現できるとする。

 こうした環境性能が顧客にとって石狩DCを選ぶ基準になることも多いという。澤村執行役員は「特に官公庁については環境性能を大きく評価して使っていただいている」と話す。