全2157文字

 「地域で生まれたデータは地域のデータセンター(DC)で処理する」――。政府が描く、DCの地域分散構想の試金石となりそうな試みが始まっている。NTT東日本とNTT西日本が進める、固定電話の通信局舎を活用するクラウドサービスの取り組みだ。

 NTT東日本は2022年7月25日、東日本エリアの局舎をDCとして利用するクラウドサービス「地域エッジクラウド」の提供を開始した。米Microsoft(マイクロソフト)のパブリッククラウド「Microsoft Azure」と同等の機能が利用できる「Microsoft Azure Stack Hub」基盤を局舎内に配備し、IaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)型のクラウドサービスを提供する。格納するデータの所在を明確にした地域密着型のクラウドサービスとして、地方の自治体や地場企業、教育機関などに売り込む。

NTT東日本の「地域エッジクラウド」のサービス内容
(出所:NTT東日本の資料を基に日経クロステック作成)
提供機能内容
仮想マシンCPU、メモリー、OSを提供
マネージドディスク仮想マシンに接続して使用するブロックストレージを提供
オブジェクトストレージ仮想マシンから利用可能なオブジェクトストレージを提供
ネットワーク接続プライベートクラウド基盤とSINET、VPN、専用線などの接続点を提供
バックアップ仮想マシン、マネージドディスクの複製機能を提供
ポータルWebブラウザーを使ってSINET、VPN、専用線などを経由して使用

 NTT東は、自社の様々なアセット(資産)を活用して地域の活性化を目指す「REIWAプロジェクト」と呼ばれる取り組みを進めている。同社の通信局舎は営業地域の17都道県に約3000カ所ある。このうち1000カ所程度がDCとして利用可能という。同社はもともと局舎内の一部をサーバールームとして貸し出すコロケーションサービスを提供していたが、同プロジェクトの一環として今回の新サービスを始めた。

機微なデータを地域内で処理

 新サービスでは、Azure Stack Hub基盤を配備した局舎(エッジDC)と顧客のネットワークを専用線やIP-VPN、学術情報ネットワーク(SINET)といった閉域網で接続することで、セキュアで低遅延な形でクラウドサービスを利用できるようにする。

 同社が新サービスを企画した背景には、パブリッククラウドに対する顧客からの様々な相談があったという。例えば、地方自治体における個人情報など機微なデータの取り扱いだ。地方自治体では、住民基本台帳や選挙人名簿管理、税制といった基幹業務については、ガバメントクラウドに基づいてシステム化が進んでいる。その一方で、母子健康手帳の交付や医療費の償還払い、要介護認定調査といった「処理件数自体が多くない業務」はシステム化が進まず、紙ベースで行われているケースが多い。

 こうした業務をシステム化する場合、導入や運用のコストの面からバプリッククラウドの活用が求められることがある。しかし、これらの業務で扱う個人情報などの機微なデータをパブリッククラウドに置くのはセキュリティー上の懸念がある。

 そこで、こうしたデータをNTT東のエッジDCに格納して1次処理する。つまり、必要最小限のデータだけを選んだり、匿名化処理を施したりしてからパブリッククラウドに送信することで、ある程度の懸念を払拭するという考え方だ。NTT東日本ビジネス開発本部第一部門クラウドサービス担当の金子真一担当部長は「こうした(パブリッククラウドとの)役割分担による機能実装が重要になるとみている」と話す。

 新サービスの開始当初は、東日本エリアの1カ所の局舎をサービス提供の拠点(Azure Stack Hubを配備するDC)とする。その後は、顧客の需要やアプリケーションの特性などを見ながら各地域への拠点展開を検討していく方針だ。例えば、ある程度の規模の需要が見込める地域や、低遅延の処理が求められるアプリケーションの需要が見込める地域があれば、その地域の局舎をサービス提供拠点として追加していく考えという。