全2039文字
PR

 トヨタ自動車がハイブリッド車(HEV)の位置付けを変え始めた。これまで燃費を最優先してきたが、2022年秋ごろに発売する新型「クラウン」に走行性能を重視した新システムを導入する。新システムの中核を担うのが、「1モーターハイブリッドトランスミッション」と名付けたHEV専用の変速機だ。

トヨタ自動車の新型「クラウン」
トヨタ自動車の新型「クラウン」
「クロスオーバー」タイプの車両を2022年秋ごろに発売する。(写真:日経Automotive)
[画像のクリックで拡大表示]

 このHEV専用の変速機は、6速AT(自動変速機)と駆動用モーター、インバーターなどを一体化したもの。トヨタは同変速機を使う「2.4Lデュアルブーストハイブリッドシステム」を、新型クラウンの最上位グレード「クロスオーバー RS」に採用した。排気量2.4Lターボエンジンや後輪側に配置した電動アクスル(eアクスル)と組み合わせることで、「トルクフルな走りを実現した」(同社Mid-size Vehicle Company Presidentの中嶋裕樹氏)という。

新開発したHEV専用の変速機
新開発したHEV専用の変速機
6速AT(自動変速機)と最高出力が61kWの駆動用モーター、インバーターなどを一体化した。寸法は、前後531×幅411×高さ571mm。(写真:ブルーイーネクサス、アイシン、デンソー)
[画像のクリックで拡大表示]

 1モーターハイブリッドトランスミッションの開発を担当したのは、BluE Nexus(ブルーイーネクサス、愛知県安城市)とアイシン、デンソーである。アイシンがモーターと変速機を、デンソーがインバーターを開発し、それらをモジュール化する部分をブルーイーネクサスが担当した。モジュールの生産自体は、ブルーイーネクサスがアイシンに委託する形で実施する。

走りに振った分「燃費は悪化」

 ブルーイーネクサスで開発を担当した表賢司氏(システム開発部主査)は「クラウンはトヨタのフラッグシップとして走りを訴求したいとの要求があり、従来とは異なるシステムが採用されることになった」と明かす。

 トヨタは長年、シリーズ・パラレル方式を推し、ハイブリッドシステム「TOYOTA Hybrid System II(THS II)」を多くの車両に展開してきた。駆動用と発電用の2つのモーターを搭載し、状況に合わせて緻密に制御することで優れた燃費性能を発揮する。新型クラウンでも、中・下位グレードにはTHS IIを使う。

 一方、今回新たに実用化するデュアルブーストハイブリッドシステムはパラレル方式で、モーターは駆動用の1つだけ。エンジンと駆動用モーターが直結しているため、アクセルペダルを踏み込んだときにエンジンの回転数を上げなくても大トルクを発生できる。モーターの駆動力によって、エンジンのターボラグを感じさせないような制御も可能だ。

デュアルブーストハイブリッドシステムの部品構成
デュアルブーストハイブリッドシステムの部品構成
パラレル方式を採用した。(出所:トヨタ自動車)
[画像のクリックで拡大表示]

 新型クラウンの燃費(WLTCモード)で比較すると、THS II搭載車に対してパラレル方式の新システムを採用するRSは6.7km/L悪くなる。開発担当のブルーイーネクサスも「走りに振った分、燃費は悪くなる」(表氏)と認める。

 燃費を犠牲にしてもトヨタがパラレル方式の新システムを用意したのは、HEVの多様化を進めるためだろう。純粋なエンジン車の肩身が狭くなりつつある中で、走行性能を重視したHEVをニーズの受け皿にする。その中核部品である1モーターハイブリッドトランスミッションとしては、高い発進応答性に代表されるダイレクト感のある走りを目指しつつ、多くの車両に搭載すべく小型化も進めた。