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 多数の組み合わせの中から最適解を探す「組み合わせ最適化アルゴリズム」と呼ばれる計算手法を応用し、物流関連の企業に配送ルートの改善を提案する「オプティマインド」。トヨタ自動車や三菱商事などが出資する有力スタートアップだ。

 同社の社長を務める松下健氏(29歳)はしばしば、部下を伴って名古屋市街を自動車で走行する。アルゴリズムによって導き出した配送ルートは顧客企業にとって本当に最適で、配送の現場で使えるのかを自身の目で確認するためだ。気づいたことを部下に伝え、技術の改善に役立てている。

 松下氏は「技術とビジネスの現場をつなぐ架け橋になりたい」と話す。「アルゴリズムで優れた配送ルートを導き出せる」といきなり提案しても、顧客には価値がうまく伝わらない。提案するルートを実際に走行して効果を確かめ、ビジネスの現場目線で技術の特徴やルートの改善案を説明することで初めて相手に伝わり、架け橋の役割を果たせると考えている。

松下 健(まつした けん)氏。1992年12月生まれ。2015年にオプティマインドを設立(撮影:早川俊昭)
松下 健(まつした けん)氏。1992年12月生まれ。2015年にオプティマインドを設立(撮影:早川俊昭)
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 名古屋大学に入学した2011年、柳浦睦憲教授の「組み合わせ最適化アルゴリズム」の講義との出会いが事業のきっかけとなった。講義で営業担当者が複数の目的地を回る際の最短経路を求める「巡回セールスマン問題」などを学び、「この分野を研究して将来、社会にインパクトを与えたい」と思った。松下氏は柳浦教授の研究室の門をたたいた。

苦手にぶつかったとき、自分が好きなことは何かを考えた

 しかし研究の過程で、アルゴリズムを生かすためのプログラミング作業が苦手だと気づいた。このままでは一流の技術者になるのは厳しいと感じた松下氏は、自分を見つめ直す。やがて「自分は人との会話が好きだ。技術をビジネスの現場の人に伝える架け橋のような存在になりたい」という思いが芽生えた。

 早速行動に移した。研究の合間に20~30社の企業を訪問し「組み合わせ最適化を使えば配送のコストや手間を省けます」と広めて回った。1年たってもめぼしい成果はなかったが「本気でビジネスの現場を変えたいと思っているなら会社と会社の立場で話をしよう」と数社の社長に持ちかけられた。意気に感じ、オプティマインドを2015年6月に設立した。