「日本市場に関しては競合他社の状況を見ながら、値上げ機会があればもちろん検討し続ける」。ホンダ副社長の竹内弘平氏は2022年8月10日に開いた2022年度第1四半期(4~6月)の連結決算会見で、インフレによるコスト増加の影響に対応するための値上げを示唆した。
同社は期初の段階で、原材料価格の高騰に加えて、輸送費や人件費の上昇の影響として、約2900億円を減収要因としていた。2021年度は貴金属や鋼材といった原材料の価格高騰が約2700億円の減益要因となっており、「2年続けての3000億円弱のコストアップは吸収できない」(同氏)と説明してきた。
今回の決算会見では、インフレに伴う原材料価格や輸送費、人件費などの影響として600億円を減収要因として追加した。日本市場以外では、米国市場での値上げを進めるという。米国では既に原材料価格の高騰分を車両価格に転嫁し始めている。今後も、「商品の価値に見合った値上げの検討を続けていく」(同氏)。2022年夏に米国で発売予定の新型SUV(多目的スポーツ車)「CR-V」などが対象になりそうだ。
原材料価格の高騰が業績に与える影響として、最も大きいのが北米の鋼材である。2022年1月の価格改定によって、「(従来比で)150%に上がっている」(同氏)という。2021年度は第4四半期(1~3月)のみの影響だったが、今期は通期(12カ月)にわたって鋼材価格の上昇影響を受ける。
2021年度は、エンジン後処理の触媒に使う貴金属が高かった。竹内氏によると現在は、「一時期よりも値上げ幅は小さくなって横ばいになりつつある」という。それでも、貴金属は値下げされるほどではないようだ。