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設計課長A:過去の失敗事例を残しています。しかし、品質不具合を防ぐことが期待できると聞いていますが、効果が感じられません。今後どのように取り組むべきか悩んでいます。

講師:失敗事例を残しても、思ったほど効果がないと悩んでいるのは、A課長、あなただけではありません。多くの設計課長が直面する課題です。効果を期待するには何を残して生かすか「魂」の入った取り組みが必要です。

 ところで、A課長、改めて聞きます。なぜ失敗事例を残さなければならないのですか。 

設計課長A:うーん……。先ほど言った通り、同じ設計不具合を繰り返さないためではないでしょうか。

講師:その通りですが、心からそう思っていますか。納得していますか? 設計者に「またやってしまった(同じ原因の失敗を繰り返し起こした)」という失敗と「こんな故障は初めてだ(経験したことのない原因で起きた)」という失敗のどちらが多いかと聞くと、多くは前者(繰り返し)と答えます。一般に歴史のある設計職場ほどその傾向が強いようです。

 A課長、あなたの職場はどちらですか。

設計課長A:設計職場で聞こえてくるのは「またやってしまった」という、同じ失敗の繰り返しが多いです。

講師:繰り返しが多いとすると、逆に、同じ失敗を繰り返さなければ、あなたの職場は不具合件数が大幅に減ることになります。つまり、不具合を起こすと設計者は大変な思いをしますが、意外なことに発生件数を減らす取り組みは単純で、設計者が「同じ失敗を繰り返さない」ことなのです。

 同じ失敗を繰り返さないためには、過去の失敗を振り返る必要があります。だからこそ、設計職場に失敗事例を残さなければならないのです。

技術上の教訓は「普遍的な知見」

設計課長A:そうか、失敗事例で過去を振り返ることが、「不具合件数を減らす近道」だったのですね。しかし、失敗事例の残し方にも不安があります。

講師:A課長、失敗事例は残せばよいというものではありません。心掛けてほしいのは2つの「教訓」です。1つは「技術上の教訓」、もう1つは「管理上の教訓」です。これらを共に残す、これが大切です。

設計課長A:技術上の教訓も管理上の教訓も耳にしたことはありますが、詳しく教えて下さい。

講師:まず、技術上の教訓です。品質不具合を起こすと、原因を突き止めて対策を打ちます。A課長、この対策で「やれやれ、終わったぞ」となっていませんか。忘れてはいけないのは、純粋に技術のどこで失敗したかを「普遍的な表現」で残すことです。これが、技術上の教訓です。

 例えば、自動車部品に使われる電気接点は、かつては機械式接点が主流で、導通不良に悩まされるケースが多くありました。接点周辺にある樹脂系材料から出る成分が接点表面に膜を作り、微弱電流を流れにくくしたのです。

 A課長、失敗事例として何を残しますか。