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 過去2回では、合成燃料の原料となる水素(H2)と二酸化炭素(CO2)の製造・回収動向について見てきた。今回は、これらH2とCO2から合成燃料を製造するプロセスと、原料の製造方法の違いによる合成燃料のカーボンニュートラル(CN、炭素中立)燃料としての位置付け、およびコスト低減の見通しについて整理してみたい。

合成燃料製造プロセスの肝は合成ガス生成

 CO2やH2を原料とする合成燃料の製造プロセスには、前回も紹介したように複数の方法が存在している(図1)。その製造の起点として最もよく用いられているのはメタンである。メタンは、天然ガスからの改質でも生成可能であるが、CO2とH2を合成して製造することもでき、このプロセスをメタネーションと呼ぶ。

図1 合成燃料の体系的生成フロー
図1 合成燃料の体系的生成フロー
MTG法とはMethanol To Gasolineの略、DMEはジメチルエーテルのこと。〔出所:経済産業省「カーボンリサイクル技術ロードマップ」(2019年6月)、日本化学会「化学と教育」(2018年)などの2次情報からADLが作成〕
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 生成されたメタンをさらに熱分解して、一酸化炭素(CO)とH2から成る合成ガスを生成する。これを再合成することでディーゼル燃料(軽油)やガソリンを直接生成するのがフィッシャー・トロプシュ(FT)法と呼ばれるプロセスである(図2)。

図2 フィッシャー・トロプシュ(FT)法
図2 フィッシャー・トロプシュ(FT)法
サソールは南アフリカSasol、シェルは英Shell、トルクメンガスはトルクメニスタン国営企業のTurkmengas、シェブロンは米Chevron、ペトロSAは南アフリカ国営企業のPetroSAのこと。bpdは、1日当たりのバレル。〔出所:石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)「国産GTL技術開発の現状と今後について」、川崎重工業プレスリリースを基にADLが作成〕
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 FT法のようにガスから液体燃料を生成するプロセスはGTL(Gas To Liquid)とも呼ばれ、すでに世界中で実用化が進みつつある確立された技術である。合成ガスから液体燃料を生成する他のプロセスとしては、メタノールを経由してガソリンを生成するMTG(Methanol To Gasoline)法と呼ばれるプロセスも存在する。ただし、コスト面からはFT法のほうが有利といわれている。

 一方で、メタンからCOとH2の合成ガスを生成する方法としては、現状では主に逆シフト反応(Reverse Water Gas Shift、RWGS)と呼ばれるプロセスが主流となっている。メタンを水蒸気改質すると、H2とCOの他にCO2が得られる。そのCO2をCOに還元するのにこのプロセスを利用する。COとH2O、およびCO2とH2の間の平衡反応(シフト反応)を触媒でCO側、すなわち逆向きに偏らせることから、逆シフト反応と呼ばれている。

 ただし、この方法は、反応温度が高くなることが課題である。このため、高温に耐え得る触媒や、反応プロセスの低温化の開発が進められているが、一方では逆シフト反応に代わる合成ガスの革新的な製造方法を確立しようと、CO2電解、共電解、ケミカルルーピングや直接合成などさまざまなプロセスの研究も進められている(表1)。

表1 CO2とH2から合成ガスを生成するプロセスの概要・課題
Cu-In2O3は、銅とインジウムの複合酸化物。〔出所:経済産業省 合成燃料研究会「中間取りまとめ」、早稲田大学「低温でCO2を資源化する新材料発見」、各エキスパートインタビュー(2021年10月)を基にADLが作成〕
表1 CO<sub>2</sub>とH<sub>2</sub>から合成ガスを生成するプロセスの概要・課題
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