アプリケーションの迅速な改善を可能にする「マイクロサービスアーキテクチャー」。これまで国内での導入例は、先進的なネット企業などにとどまっていたが、それが近年は、みんなの銀行やJCBなど金融機関による採用が相次ぐ他、三越伊勢丹のような伝統企業も導入するなど、本格的な普及期に入りつつある。ただし既存システムへの適用では、理想を実現しようとしても難題が立ちはだかる。例えば、アプリケーションを独立性の高いサービスに切り分ける必要がある。どうすればうまくいくのか。最新の事例から成功の秘訣となる「現実解」を探る。
出典：日経コンピュータ、2022年8月4日号 pp.24-37
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マイクロサービスの活用はネット企業が中心だったが、今や一般企業にも広まりつつある。その原動力は、システムを俊敏に変更したい、保守性を高めたいというニーズの高まりだ。ふくおかフィナンシャルグループ傘下の「みんなの銀行」の事例でメリットを見よう。
三越伊勢丹は店舗の販売員によるリモート接客のシステムを開発し、2020年11月に顧客に対してサービスを開始。その後、機能追加などのアプリケーション変更を重ね、1年半でリリース回数は100回を超えたという。この高速開発を支えるのはマイクロサービスアークテクチャーとDevOps基盤だ。
ジェーシービー（JCB）は2年ほど前からマイクロサービスに取り組み、実績を上げてきた。「現在は1割ほどの開発案件で、マイクロサービスに基づいたアジャイル開発を推進している」。片岡亮介デジタルソリューション開発部部長はこう話す。
ディー・エヌ・エー（DeNA）は過去に実施したマイクロサービスのプロジェクトでいくつかの課題に突き当たった。それを改善しながら、さらなるマイクロサービス活用につなげている。
マイクロサービス化の最難関はデータベース分割にある。アプリ同士を疎結合にするには、データベースもアプリごとに持たせるのが理想だ。既存システムのマイクロサービス化ではアプリの分割に合わせてデータベースを切り分ける必要があり、難度が跳ね上がる。オイシックス・ラ・大地はそうしたデータベース分割に挑んでい…
損保ジャパンは新基幹システム「SOMPO-MIRAI」で、開発スピードや保守性を向上させるために疎結合の考え方を取り入れた。契約管理や事故受付といったサブシステムごとに独立してリリースできるようにした。
NTTドコモはレガシーシステムのモダナイゼーションを通じ、コンテナへの移行を進めている。既存のアプリを整理するなかで、課題だったチェックロジックの一覧性や再利用性を向上させた。
マイクロサービスの導入を成功に導く3つのポイントが見えてきた。サービス粒度の決定、データベース（DB）の整理・分割、インフラの整備だ。どうすればうまく進められるのか、先行事例や識者からノウハウを学ぼう。
マイクロサービスアークテクチャーはメリットの半面、弱点もある。従来に比べて管理対象が多く、しかもそれらを連携して用いるのでテストや運用の難度が上がりがちだ。マイクロサービスの副作用といえる注意点を3つ紹介する。