好きだったあのゲームが復刻されなくてプレイできない。海賊版は違法なので手を出せない。そうした悔しい思いをしたことはないだろうか。
オンライン開催のゲーム開発者会議「コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス2022」(CEDEC2022)で2022年8月25日、この問題を考えるセッション「復刻できないあのゲームを、合法的にプレイできるようにするために、今できること」が行われた。登壇者は、松田特許事務所(事務所)/50Hit.jp(古物商)の松田真代表弁理士、骨董通り法律事務所の橋本阿友子弁護士、NHK放送文化研究所メディア研究部の大高崇メディア動向主任研究員の3人。
登壇者はまず、この問題を考えるようになった理由を語った。橋本氏は「絵や彫刻などの文化資産は国の施策として保護されているが、ゲームは文化資産にもかかわらず保護されていない。日本のゲームが日本で保存できる仕組みを考えていきたい」と語った。大高氏は、過去の放送番組である放送アーカイブの活用を研究しており、そこからゲームの問題も同様に考えるようになったという。松田氏は趣味でスマートフォン向けのゲームを作っており、「子孫に自分たちが作ったゲームをやってもらって少しでも面白いと思ってもらえたらうれしい」とした。
最初に橋本氏が著作権法について説明した。ゲームは著作物であり、利用したい場合は著作権者の許諾を得なければならないのが大原則だ。権利を持っているゲーム会社が復刻するなら問題ない。それが望めない場合、例えばゲーム会社が倒産した場合は誰も許諾権限がないので、ユーザーがプレイできなくなる。
この問題を解決するにはいくつかの方法が考えられるという。まず橋本氏が挙げたのが「裁定制度」だ。
権利者が不明の場合に、供託金を先に払って使えるようにする制度である。権利者の許諾を得るのが簡単ではない場合、例えば「権利者が誰か分からない」「権利者の連絡先が分からない」といった場合に、文化庁長官が権利者の許諾に代わって裁定を下す。
松田氏によると、実際に裁定が行われた実例が存在するという。著作権者がショウエイシステム(編集部注:1999年に倒産)の「北斗の拳3 新世紀創造 凄拳列伝」というゲームに対し、東映アニメーションが裁定を申請した。ただ橋本氏は「裁定制度の適用は実際には簡単ではない」と語る。「権利者が不明の場合、本当にそうなのかどうかを決まったルールで調査しなければならない。通常の使用料に相当する額の補償金を供託する必要もある」(橋本氏)。