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 2022年8月23日から25日にかけて、オンラインで開催されたゲーム開発者会議「コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス2022」(CEDEC2022)の3日目、理化学研究所計算科学研究センターの松岡聡センター長が、「ゲームはスパコンの夢を見るか、スパコンはゲームの夢を見るか」と題した基調講演を行った。

 ゲーム機とスパコン(スーパーコンピュータ)は、一見、縁遠く思えるが、「歴史的にも、また今後も、非常に近いもの。ゲームとスパコンは、お互いに影響し合って新しい未来を開いていく」(松岡氏、図1)という。

図1 理化学研究所計算科学研究センターの松岡聡センター長
図1 理化学研究所計算科学研究センターの松岡聡センター長
(画像:日経ソフトウエアがオンライン講演をキャプチャー)
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 ちなみに、松岡氏は初期のゲームプログラマー。1980年代の大学生の頃には、任天堂の社長だった故岩田聡氏とともにファミコンのゲーム「ピンポール」を開発していた。

 当初は、もちろんゲーム機(や事実上、ゲーム機のようなものだった8ビットパソコン)とスパコンは比較できるようなものではなかった。汎用の8ビットマイクロプロセッサ(CPU)で作られたパソコンと、専用アーキテクチャーを持つスパコンの性能差は圧倒的だった。

 松岡氏によると、1976年に登場したスパコン「Cray-1」と、1978年に登場した8ビットパソコン「ベーシックマスター」(BM)との性能差は、BM側のプログラムをBASICで書いた場合で100万倍、アセンブリ言語で書いた場合で1万倍もあった。当然、Cray-1の方が速い。当時の汎用の8ビットマイクロプロセッサは「ゲームには使えるが、スパコンとして科学技術計算に使えるような代物ではなかった」(松岡氏)。

 ところがその後、マイクロプロセッサが進化し、汎用のマイクロプロセッサを使う並列型のスパコンが使い物になるようになってきた。

 2000年ごろには、松岡氏の研究室(当時、東京工業大学)が開発したPCクラスタ(多数の汎用的なパソコンで作った並列型のスパコン)が、スパコンの世界ランキング「TOP500」にランクインするまでになった。さらに、松岡氏は2006年にPCクラスタの「TSUBAME1.0」を開発。TSUBAME1.0はいくつかの性能面で、当時の専用アーキテクチャーを持つスパコンの最高峰「地球シミュレータ」を凌駕した。

 重要なのは、「(TSUBAME1.0は)汎用のプラットフォームをベースに作った。ソフトウエアを含めて、汎用のプラットフォームなので、一部の専門家だけではなく、あまねく人たちがスパコンのパワーを利用できる」(松岡氏)ことであるという。