累計3億回、接種率82%を超え、日本は世界で最も新型コロナウイルス向けワクチンの接種が進んだ国の一つになった。最盛期で1日170万回超の接種を支えた成功要因の一つはデジタル活用だった。一方で在庫偏在やデータ反映の遅れ、組織の連携不足など、現場に一部の混乱と課題も残した。ワクチン接種を加速させたデジタル活用の成功と課題を検証する。

特集
検証・デジタルはワクチン接種をどう加速したか
目次
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誤読み取りで未接種でも「接種済み」、接種記録の誤り多発から学ぶ想定の広げ方
新型コロナウイルスのワクチン接種事業は、菅義偉首相(当時)が2021年5月に「1日100万回を目標とする」と表明すると、達成困難と見られた目標を2021年7月に約170万回と大きく突破した。政府が提供した情報システムも効率化に貢献した。
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ワクチン在庫推定の混乱はなぜ起こった、想定外の運用で可視化を失った教訓
2021年2月に始まった新型コロナウイルスワクチンの接種は、政府が緊急に短期間で開発した2つの情報システムが重要な役割を果たした。どちらも機能の改善を繰り返すことで、最高で1日170万回超という接種の業務を下支えした。
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接種の加速へ変わり続けたワクチン配送システム、厚労省・河野チームとNECの格闘
新型コロナウイルスのワクチン接種事業は、厚生労働省が計画していた想定を超えて変わり続けた。接種の機会が国の会場や職域接種に広がり、地方自治体への配送でも河野太郎ワクチン担当相(当時)のもとで接種を加速させる業務の見直しが常に続いたからだ。
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混乱した10万円給付の失地挽回策が原点、国がワクチン接種記録を高速導入できた理由
2021年4月に本格始動したワクチン接種は、政府の判断にわずかな遅れや誤りがあれば、2020年に続く「デジタル敗戦」を喫する恐れもあった。成功と失敗の分岐点は、国がワクチン接種記録の仕組みを構築するか否か、さらには「構築できるか否か」の判断だった。
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ワクチン接種支援システムの成功と蹉跌、高速立ち上げを達成するも縦割り残る
新型コロナウイルスのワクチン接種が日本で本格化して1年半が経過した。2022年8月23日時点で接種率(1回以上)は82%に達し、接種実績は欧米諸国の多くを上回る。