まずはデジタル機器と、その中に保存されたデータについて考えていこう。
本人が死亡した場合、デジタル機器は民法上の相続財産として扱われる。5万円(時価)を超えるものは個別に申告する必要があるのだが、パソコンの減価償却は4年と短いこともあり、5万円を超えない「家財一式」に含めて申告することが多い。いずれにせよ、相続人で協議して機器ごとの相続者を決めることになる。
相続したデジタル機器のパスワードがわからないと、当てずっぽうで入力してみる人もいそうだ。しかし、間違ったパスワードを繰り返し入力すると初期化される機器もある(図1)。スマホのロック解除は専門業者でも難しく、解除方法がわからないと初期化される可能性が高い。
パソコンの場合、パスワードを間違えてもデータが消える危険性は少ないが、当てずっぽうで開く可能性も低い。ただし、内蔵ドライブを取り出して別のパソコンに接続するなど、中身を確認する手段は残されている。
ロックが解除できなくて初期化されたり廃棄されたりするのを避けるには、解除方法を紙に書き留めておくのが一番だ。鍵のかかる引き出しなど、普段は見られず、何かあったときに発見されやすい場所にしまっておこう。
ロックは解除されるものと考えて、やっておきたいのがファイルの仕分けだ。わかりやすくファイルを整理し、見せたくないファイルは隠す(図2)。
問題は見せたくないファイルの隠し場所だ。例えば、マイクロソフトのクラウドサービス「OneDrive」には、「個人用Vault」という特殊なフォルダーがある(図3)。2段階認証が必要で、隠し場所としてはもってこいだ。