デジタル技術の進展により、本格的なデータ活用社会が到来している。建設分野も例外ではない。民間や研究機関による防災技術の向上を後押しすべく、気象庁はデータ提供に本腰を入れる。だが、行政などが持つ膨大なデータの公開範囲や活用方法はまだ検討の余地があり、十分とはいえない。データを扱う環境整備は途上で、利用料金の問題や人的リソースの不足なども深刻だ。
気象庁が防災・気象情報の発信方法を大きく転換する。従来、警報の発表単位の細分化をはじめ時系列表示や危険度分布の発表など、情報の量や幅を拡大させる傾向にあった。
それを、シンプルで分かりやすい情報へと絞り込むというのだ。大雨や洪水、土砂災害に関わる警報・注意報、気象など各種の情報を、大きく2種類に分けて整理することを掲げた。2022年7月、国土交通省水管理・国土保全局と気象庁が、専門家らと開いた「防災気象情報に関する検討会」で明らかにした。
市区町村の約2割が、大雨など事例1件当たりの情報量を多いと捉えていることが背景にある。情報の受け手である住民に目を向けると、「情報過多」だと感じる割合はさらに多く、約5割に上る。だからといって提供する情報量を減らせばよいというわけではない。住民における防災情報の在り方の難しさはより深刻だ。