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 コンクリート打設の施工水準を一定に保ちながら、使った材料や施工時刻、気温、施工手順などを記録し、インターネット上で公表する──。山口県がコンクリート構造物で始めたデータ活用の取り組みが、他の自治体に広がり始めている。やみくもに集めるのではなく、分析に使えるデータの蓄積を、土木インフラの品質向上につなげている。

 新潟県は2021年、発注する工事におけるコンクリートの施工記録に関するデータベースを公開した。工事の施工者やコンクリートの製造者・試験結果、当日の天候、施工時の人員体制などを詳細にまとめたデータだ。

 同様のデータ整備・公開は群馬県も手掛ける。19年度以降に蓄積した記録は300件を超えた。

群馬県がインターネット上で公開するコンクリート構造物の施工記録データベース(出所:群馬県建設技術センター)
群馬県がインターネット上で公開するコンクリート構造物の施工記録データベース(出所:群馬県建設技術センター)
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群馬県の施工記録データベースで入手できる施工記録シート。個々の施工内容が詳細に読める(出所:群馬県建設技術センター)
群馬県の施工記録データベースで入手できる施工記録シート。個々の施工内容が詳細に読める(出所:群馬県建設技術センター)
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 両県が整備するデータは、後から振り返って他の設計や施工に役立てることができる。こうしたデータを公開する狙いは、コンクリートの品質をより確実に向上させること。従来のように組織の中だけで知見や情報をため込むよりも、公開して外部の力を借りる方が目的を達成しやすい――。誰もが二次利用可能な無償のデータである「オープンデータ」の考え方だ。

 新潟県や群馬県が追いかけるのは山口県だ。同県は07年度、コンクリート構造物のひび割れを抑制する独自の品質向上システムの運用を始め、データベースを公開した。運用の開始後に県が発注したコンクリート構造物は、大きなひび割れがほとんどなく表面の風合いがほぼ均一に保たれている。

山口県でコンクリート構造物の品質向上システムの運用に携わる土木建築部技術管理課の吉村崇主任。施工されたコンクリート構造物を実際に見学して刺激を受ける県外の発注者もいるという(写真:日経クロステック)
山口県でコンクリート構造物の品質向上システムの運用に携わる土木建築部技術管理課の吉村崇主任。施工されたコンクリート構造物を実際に見学して刺激を受ける県外の発注者もいるという(写真:日経クロステック)
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 山口県が構築した「山口システム」でも重要な役割を果たすのが施工記録のデータベースの運用だ。その他、施工水準を一定に保つための「施工状況把握チェックシート」や施工のガイドラインによる確認、設計時のデータベース活用、専門家によるデータ分析などを組み合わせる。山口県がデータベースに掲載する施工記録は21年3月時点で1998件に上る。

コンクリートの品質向上に関する山口県のデータ活用の概要(出所:山口県と山口県建設技術センターの資料、取材を基に日経クロステックが作成)
コンクリートの品質向上に関する山口県のデータ活用の概要(出所:山口県と山口県建設技術センターの資料、取材を基に日経クロステックが作成)
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 システムの肝は、施工の水準を一定にする仕組みにある。コンクリート構造物の品質に影響する設計の違いを明らかにするためだ。

 施工時にひび割れ対策が不十分だと、設計に問題がなくてもひび割れが生じる可能性がある。つまり、施工水準が現場によってまちまちだと、どれだけ施工内容を記録しても適切に分析できるデータは得られないのだ。では山口県は、どのように施工水準を保っているのか。