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 そのデータなら出せるから、ぜひ使ってほしい――。東京都が2021年度に始めたサービス開発コンペ「ハッカソン」で参加者が行政データの活用ニーズを掘り起こし、自治体のオープンデータ整備を後押しする例が生まれている。イベントが2年目に突入し、建設業を含む多くの分野で行政データ利用の活性化に期待が高まる。

 東京都台東区は2022年3月、区内の各保育園の空き情報や入園できた子どもの基準点数(入園の優先順位付けに使う点数)などのデータを、誰もが二次利用可能な「オープンデータ」の形式で公開した。

 きっかけとなったのは、東京都が21年度に初めて開催した「都知事杯オープンデータ・ハッカソン」だ。ハッカソンとは、数日など短期間で集中的にソフトウエアの開発に打ち込むイベント。一般の参加者が都のオープンデータを活用してアイデアを出し合い、都民の暮らしの利便性を高めるサービスなどの開発を競った。

2021年度に開催した「都知事杯オープンデータ・ハッカソン」の様子(写真:東京都)
2021年度に開催した「都知事杯オープンデータ・ハッカソン」の様子(写真:東京都)
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 22年1月、選考を通過したチームの発表会が開催された。台東区でオープンデータを担当していた企画財政部情報政策課の田畑俊典課長は、その様子をオンラインで見て、入りやすい保育園の情報を地図上で見える化したサービス提案に目が奪われた。「他区のデータが使われているのに、台東区のデータが使われていない。うちも情報は毎年公開しているのに」(田畑課長)

 台東区のデータが使われなかった理由の1つはデータの形式だ。台東区は従来、保育園に関するデータをPDF形式で公開していた。だがPDF形式はWeb上で閲覧しやすい半面、表組みの行や列で一部が結合されているなど機械的に読み取るのが難しい。

 そこで区は、オープンデータに広く使われているCSV形式のファイルを作り、新たにオープンデータとして公開。複数の行・列にまたがる結合を解除した他、中身のデータにも手を加えた。数値を「20~14」といった範囲を示す表記から「20・19・18…」と機械的に拾えるように改めた。

台東区が「保育所入所基準データ」を従来のPDF形式からCSV形式に変換(クレンジング)した際の主な修正内容(出所:台東区)
台東区が「保育所入所基準データ」を従来のPDF形式からCSV形式に変換(クレンジング)した際の主な修正内容(出所:台東区)
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 区はデータを公開していても、それが使えるオープンデータになっておらず、ニーズを把握できていなかった。それが、ハッカソンの参加者の提案によって行政が保有するデータが住民の暮らしに役立つ可能性が示され、オープンデータの整備を後押しすることにつながった。行政の職員がオープンデータを整備するための手間やコストはゼロではない。行政のオープンデータに対するニーズがあると確認できた意義は、大きいといえる。

 20年度に当時の内閣官房情報通信技術総合戦略室が自治体のオープンデータに関する取り組みを調べたところ、過半数がオープンデータの効果や利点、ニーズが不明確だと答えた。自治体にとって、オープンデータを整備しても本当に使われるのかが分からないとすれば、整備する意欲が低下するだろう。

2020年度に自治体に対して実施したオープンデータに取り組む際の課題や問題点についてのアンケート結果の上位5件。カッコ内は件数。1団体につき回答は最大で5件(出所:当時の内閣官房情報通信技術総合戦略室の資料を基に日経クロステックが作成)
2020年度に自治体に対して実施したオープンデータに取り組む際の課題や問題点についてのアンケート結果の上位5件。カッコ内は件数。1団体につき回答は最大で5件(出所:当時の内閣官房情報通信技術総合戦略室の資料を基に日経クロステックが作成)
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