「(プロジェクトに)優先順位を付けて、優先順位の高いところにリソースを集中させ、低いものは遅らせる」――。河野太郎デジタル相はデジタル庁2年目の始動に当たり2022年8月29日の報道各社インタビューで、こう強調した。
発足2年目のデジタル庁が行政DX(デジタルトランスフォーメーション)の具体的な成果を出し続けるには、プロジェクトの整理が課題となる。デジタル庁は発足当初から多岐にわたる事業や法制度を所管する一方で、人員は官民合わせて約700人と十分とはいえない。そんななか、さらにこの1年で担当すべきプロジェクトが増えている。
事業 | 概要 |
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デジタル臨時行政調査会 | 「デジタル原則」を踏まえ、規制の横断的見直しを進める |
デジタル田園都市国家構想の実現 | 地域のデジタル基盤の整備などを進める |
Web3.0の推進 | デジタル資産の調査研究や分散型アイデンティティーの利用環境整備などを進める |
アナログ規制撤廃の事務局を追加で担当
この1年で増えたプロジェクトのうち大きいものが、デジタル庁が事務局を務める政府の「デジタル臨時行政調査会(デジタル臨調、会長:岸田文雄首相)」の設立である。デジタル社会にそぐわない「目視」「対面」「人の常駐」といったいわゆる「アナログ規制」の一括見直しプランを取りまとめ、2022年からの3年間を集中改革期間として、一気に法規制を見直す役割を担っている。
同事務局は約40人で構成され、各府省庁のほか地方自治体、民間企業などからメンバーが集まった。デジタル臨調は各府省庁と約1万の法令のうち、アナログ規制と見なした5354条項を精査。2022年6月には、うち3895条項について見直しの方針を確定した。
各府省庁は2022年9月末までにこの3895条項についての具体的な工程表を作成する。デジタル臨調の事務局が中心となって一括的な法改正に向けた準備を進め、2023年の通常国会から順次法改正する。政令・省令は2022年内にも各府省庁で適宜改正するとしている。
法規制を見直して、書面提出や対面などを求める規制などを原則廃止する「デジタル原則」に適合させるには、オンライン手続きやWeb会議、カメラやセンサーといったデジタル技術を活用することが欠かせない。例えば工場などの現場にカメラやセンサーなどの技術を導入することで、従来の「目視規制」や「実地監査規制」などを撤廃できる可能性がある。デジタル臨調の事務局はこうしたデジタル技術と規制見直しの関係を整理した「テクノロジーマップ」に加え、具体的な技術やサービスを掲載するカタログの作成も進めている。
増えたプロジェクトはデジタル臨調の事務局だけではない。岸田内閣が推進する地方からデジタル実装を進める政策である「デジタル田園都市国家構想」の実現に向けて、デジタル庁は自治体が使うデータ連携基盤の整備や「Well-Being指標」の策定と活用推進にも新たに取り組んでいる。さらに、Web3.0を成長戦略の柱にするなどとした2022年春の自民党提言を受け、デジタル庁はWeb3.0の推進も進めることとなった。