日本を代表する大企業が続々とシステム子会社の吸収合併に乗り出している。各社は吸収する理由について「コミュニケーションコスト」の課題解決を挙げる。IT人材を本体に集約することで、迅速で柔軟なIT・デジタル施策を実行できる環境を整える。
システム子会社の「改新」始まる(1)より続く大手事業会社を中心に、システム子会社を吸収合併する流れが活発化している。クボタは2022年7月20日、システム子会社を吸収合併すると発表した。SUBARUも2022年2月に、システム子会社の吸収合併を発表している。住友化学は2021年7月、デンソーとコスモエネルギーホールディングスは2020年にそれぞれシステム子会社を吸収合併している。
親が子を「呼び戻す」吸収合併の背景にあるのが「コミュニケーションコスト」の問題だ。たとえグループであっても会社が異なれば、システム開発のたびに見積もりや稟議(りんぎ)、検収などの作業が必要となる。
企業のIT・デジタル施策には市場の変化に応じて柔軟さや機敏さが求められる。だが、システム子会社を抱えていると会社間のコミュニケーションに時間を割く必要があるわけだ。2021年に子会社を吸収合併した住友化学の猪野善弘執行役員IT推進部担当IT推進部長は「デジタル施策の重要度や求められるスピードが増すにつれて、(IT部隊が)子会社であることのメリットを見いだせずにいた」と振り返る。
クボタIT部隊は5.5倍増
クボタは2023年4月に、完全子会社のクボタシステムズを吸収合併する予定だ。2022年8月時点でクボタ本体のIT部隊の人数は約130人だが、吸収合併により5.5倍の約710人体制となる見込みである。
「別会社であることでどうしても会社間に壁があった。IT部隊をクボタ本体に取り込むことで壁をなくし、当社が力を注ぐDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進していきたい」。吸収合併の狙いをクボタの吉川正人副社長執行役員企画本部長兼グローバルICT本部長はこう説明する。