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 自動車、自転車、そして自動配送ロボット。2023年、宅配の荷物を送り届ける車両型ロボットが道を行く姿が、いっそう身近になりそうだ。道路交通法の改正により、自動配送ロボットを使った宅配サービスが、実証実験から実用化へと大きく前進する見通しが出てきた。

 2022年4月27日、道路交通法の一部を改正する法律が公布された。施行日は未定だが、公布日から1年以内の施行を予定している。改正法では一定の要件を満たす自動配送ロボットを「遠隔操作型小型車」と定義し、自転車や自動車などの日常的に使用される車両のラインアップの1つに位置付ける。改正で歩道を走行できるようになり、人間が近接で監視する必要がなくなる。また、ロボットを走らせたい場所を管轄する都道府県公安委員会に通行場所や機体の仕様に関する事項などを届け出れば、道路使用許可を受けずにロボットを通行させることが可能になる。

 ロボットだけで荷物を送り届ける自動宅配サービスを実用化するための法律面のハードルが、ぐっと下がるわけだ。現行の道路交通法上では、走行させるロボットの定格出力などに応じて自動車または原動機付き自転車に該当することとなり、道路使用許可を受けなければ遠隔操作での公道走行ができなかった。

 楽天グループの牛嶋裕之コマースカンパニーロジスティクス事業ドローン・UGV事業部UGV事業課シニアマネージャーは「各社が自動配送ロボットの公道走行実験を行ってきた。その実績が評価されての改正につながったと思う」と語る。改正道交法について「一般的な普及を前提としている」とみる。自動配送などのロボットを開発するZMPの龍健太郎ロボセールス&ソリューション事業部長も「規制緩和によって、今後、実用化に向けた動きが広がりやすくなり、実証実験も容易になるだろう」と期待を膨らませる。

実用化にらみ実証実験を急ぐ

 改正道交法の施行をにらみ、宅配企業やロボット企業は実証実験を繰り返して技術や知見の蓄積を急ぐ。

 楽天グループはパナソニック ホールディングスや西友、つくば市と共同で2022年5月28日から7月30日までの毎週土曜日に自動配送ロボットを活用した配送サービスを実験してきた。つくば市にある西友つくば竹園店から、ロボット実験区間に指定されている遊歩道等を使用し、遊歩道に隣接する集合住宅や住宅地の約1000世帯に配達した。

 注文から最短30分で配送するほか、時間帯を指定しての配送も可能だ。今回の共同実験では、楽天グループはスマートフォン向けのロボット配送専用の注文サイトや、注文と配送を一元的に管理する店舗向けのシステム、ロボットに付いているロッカー部分の開発を担当した。もともとは常温の商品しか配達できなかったが、ロッカー専用の保冷ボックスを新たに開発。常温・冷蔵・冷凍いずれの商品も配送可能になった。

楽天グループのロボット自動配送実証実験の概要
楽天グループのロボット自動配送実証実験の概要
(出所:楽天グループの資料をもとに日経クロステックが作成)
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 実証実験後に利用者にアンケートを採った結果、幅広い世代にニーズがある感触を得たという。「子育てしている中で、なかなか買い物に行けるタイミングがなかったから助かる」「一人暮らしだが在宅勤務が多いから平日も使いたい」などの声が得られた。

 実証実験期間の終了後も毎週水曜日と土曜日に引き続きサービスを提供している。現在稼働しているロボットは1台で、1日のうち同じ時間の枠を複数の世帯が利用することができない。牛嶋氏は、「実用化は見えてきた。ロボットを数台に増やしてサービスを提供できる利用者を増やしたり、コンビニエンスストアなど同一地域内の様々な配送をロボットが担うようにしたりするのが将来の目標だ」と意気込む。