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 人工知能(AI)というと機械学習や深層学習が注目されがちだが、実はそれはAIの半分にすぎない。あとの半分、いわば「アナザーAI」は企業の生産計画や物流などで重要な役割を果たす「最適化AI」だ。最適化AIを実現するための技術が、「焼きなまし法」や「ビームサーチ」などの「ヒューリスティックアルゴリズム(メタヒューリスティクス)」である。この連載では、競技プログラミングサービスを提供しているAtCoderの高橋直大社長が、アルゴリズムに対する深い知識を生かし、最適化AIを活用している企業を訪ねて取り組みを探っていく。

 今回は、AIを利用したソリューション提供を得意とするエクサウィザーズを訪問した。同社の中で最適化AIを手がける数理最適化グループでテックリードを務める石丸裕吾MLエンジニアに、大手電力会社の水力発電の事例を聞いた。同グループの加藤佑矢MLエンジニアには、建設機器/機材レンタル会社の配送計画の最適化について聞いた。(聞き手は高橋 直大=AtCoder)。

左から、エクサウィザーズ AI Frontier部 数理最適化グループの加藤佑矢MLエンジニア、同グループの石丸裕吾MLエンジニア、AtCoderの高橋直大社長
左から、エクサウィザーズ AI Frontier部 数理最適化グループの加藤佑矢MLエンジニア、同グループの石丸裕吾MLエンジニア、AtCoderの高橋直大社長
(撮影:日経クロステック)
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まず、エクサウィザーズの中での数理最適化(最適化AI)の位置づけを教えてください。

石丸氏:エクサウィザーズは、AIに関連した業務を顧客企業向けに提供しています。AIの各分野に応じて「構造化データ」「画像認識」「自然言語処理」「数理最適化」の4つのグループがあります。構造化データは、機械学習系の案件を全般的に⼿がけるグループです。

 顧客は製造業や建設業、小売業や飲食店など多岐にわたります。エクサウィザーズが各企業と一緒に仕事をしていく中で、解決や改善をしたい様々な課題が出てきます。その中から数理最適化が適した課題を我々のグループのエンジニアが担当し、ビジネス担当や顧客と要件を整理をしながらプロジェクトを進めていきます。

 例えば3カ月や半年といった期間を決めてPoC(概念実証)を行い、最小限動くソフトウエア、すなわちMVP(Minimum Viable Product)を開発するケースが多いです。PoCといいつつ、最終的な成果物は顧客が実際に利用できるものを目指しています。その後、必要であれば顧客のシステムに組み込むためにもう少し大規模な開発を行うこともあります。その際には、ソフトウエアエンジニアや子会社のエクスウェアに協力を依頼したりします。

数理最適化の案件は全体のうちどれくらいの割合ですか。

石丸氏:現状では機械学習系の案件が圧倒的に多いですが、数理最適化の案件も意外にあります。最近は機械学習との組み合わせで増加傾向にあるように感じています。

 時期によっては、数理最適化の部分が小さい案件を受けることもあります。メンバーがその案件にやる気があって、かつ工数が空いているのであれば、スキルアップの意味でも悪いことではないと思うので。