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 IT業界における多重下請けやベンダーロックインは、ユーザー企業・官公庁とITベンダーがもたれ合う構図の中で、長く温存されてきた。一方でDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が増す中で、こうした「必要悪」を是正する動きも足元で進んでいる。IT業界は悪弊から脱却できるのか。

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 「業界自体を作りかえるきっかけにしたい」。大手企業を中心にシステム内製化を支援する情報戦略テクノロジーの高井淳社長はこう力を込める。

 ITベンダーが何層にも連なり、中抜き業者が利ざやを抜く多重下請け構造を是正するため、子会社を通じて、2021年1月に正式に提供を始めたのが「WhiteBox」というサービスだ。2022年7月に同子会社を吸収合併し、情報戦略テクノロジーが自ら運営する形に切り替えた。

登録企業数は約1100社、登録エンジニア数は約3万人

 WhiteBoxはシステム開発案件やエンジニア情報を共有し、システム開発案件を抱えてエンジニアを求める企業と、その仕事に見合うスキルを備えたエンジニアが所属する企業をマッチングさせるプラットフォームである。現在、登録企業数は約1100社で、登録エンジニア数は約3万人まで増えている。

情報戦略テクノロジーが提供する「WhiteBox」の画面例
情報戦略テクノロジーが提供する「WhiteBox」の画面例
(画像:情報戦略テクノロジー)
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 WhiteBoxの特徴は、他のプロジェクトで稼働中のエンジニアが所属する企業を探せる点にある。競合サービスは、現時点で稼働していない、もしくは手が空くことが確定しているエンジニアを登録してもらう仕組みが一般的とされるが、WhiteBoxは稼働中のエンジニアも含めて登録してもらっている。

 システム開発案件を抱える企業にとっては、他のプロジェクトに携わる優秀なエンジニアが所属する企業を見つけ出しやすくなる。DXが重要性を増す中、システムの内製化に舵(かじ)を切るユーザー企業も少なくない。こうした企業がWhiteBoxを通じて、規模は小さいながらも確かな技術力やエンジニアを持つ企業と直接つながれば、システム開発案件を差配するだけで報酬を得る中抜き業者が介在する余地が減る。結果として「(多重下請け構造を成していた)商流の階層が浅くなり、エンジニアの単価が上がる」(高井社長)。

 多重下請け構造の末端でもがいていた中小ITベンダーや、そこに所属するエンジニアにも光が当たる。エンジニアが参加するプロジェクトの予定が先々まで決まっていれば、「エンジニアを計画的に付加価値が高いプロジェクトにアサインできる」(同)。

 現状はシステムの運用や保守といった名目で、ITベンダーの優秀なエンジニアをユーザー企業などが長期間抱え込むケースは珍しくない。エンジニアにとっては、スキルアップの機会を奪われてモチベーションが下がる恐れがある。

 WhiteBoxは、技術力を持ちながらも多重下請け構造の末端であえいでいた中小ITベンダーが、ユーザー企業と直接取引できるケースを徐々に増やすことで、現状から脱却する武器になる可能性を秘める。