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中抜き業者によるピンハネに、三次請け以下のベンダーによる人売り、結果として安月給で人材をこき使う多重下請け構造の実態――。日経クロステックはIT業界の第一線で活躍する識者を招いて、覆面座談会を開催した。本誌名物コラム「木村岳史の極言暴論!」でおなじみの編集委員・木村岳史も参戦、問題点に斬り込んだ。果たしてIT業界の悪弊につけるクスリはあるのか。議論の模様を2回に分けてお届けする。

木村 私が記者としてIT業界に関わり始めた30年以上前から、多重下請けやベンダーロックインに伴う弊害や問題点が議題に挙がっていました。こうした構造は今も全く変わっていないどころか、多重下請けやベンダーロックインによる問題はむしろ以前よりも根深くなっている印象です。そもそも、何が問題の根源なのでしょうか。

日経クロステック編集委員の木村岳史
日経クロステック編集委員の木村岳史
(写真:村田 和聡、以下同)
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多重下請けやベンダーロックインによる問題はむしろ以前よりも根深くなっている印象です(木村)

A氏 多重下請けやベンダーロックインなど、IT業界に関する問題点を論じる上で、私は業界にいる人員の能力から目を背けちゃいけないと思ってるんですよ。発注者側も一次請けベンダーとされる会社も、基本的にそこにいる人たちは頭がいい方たちです。一方で日本でITエンジニアと呼ばれる人員の大半は三次請け以下のベンダーに所属している。この人たちの能力は非常に低い。ですから発注者側がシステム開発の本質を間違えないことが第一歩です。その上で、「イケてるエンジニア」を発注者の近くで働かせる。解決策は以上、終了!なんですよ。

 ただ、これがまた難しい。なぜなら、エンジニアに優秀な人はいないから(笑)。

覆面座談会の参加者(左からA氏、B氏、C氏)
覆面座談会の参加者(左からA氏、B氏、C氏)
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覆面座談会の参加者
参加者肩書き
木村 岳史日経クロステック編集委員
A氏中堅ITベンダー社長
B氏中央官庁幹部
C氏大手金融機関などの元CIO(最高情報責任者)

木村 ユーザー企業経験者の立場として、Cさんは問題の原因をどう考えますか。

C氏 私はこれまで発注側と受注側、双方を経験してきました。そうした経験を経て最も大きい課題だと感じているのは、発注者の力が弱いことです。本来は開発をコントロールすべき発注側に知識や経験が足りずコントロールする力が弱ければ、受注側の思いのままになってしまいます。

 多重下請けやベンダーロックインによって起こる悪習慣が生まれた背景には、日本のITの成り立ちがあります。計算機を社会に普及させるタイミングで、当時の通商産業省(現・経済産業省)などが補助金政策を展開し、その動きに対応したのが当時の電機メーカーと現在のNTTの前身です。日本の計算機の導入においては、計算機のユーザー不在のまま計算機ありきで議論が進められたわけです。

 その後、企業内にIT組織やシステム子会社ができ始め、そのタイミングでアウトソーシングがはやりました。アウトソーシングの流行により、多くの企業がIT組織やシステム子会社を切り出してしまったのです。その結果、ユーザー企業はITに関する知識や経験を蓄え、IT組織を構築する機会を失いました。