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 味の素の白神浩取締役代表執行役副社長CIO(最高イノベーション責任者)は2022年10月17日、オンラインで開催された「日経クロステック EXPO 2022」に登壇した。同社グループが取り組むDX(デジタルトランスフォーメーション)で得た成果や、半導体チップの電気配線を光配線に置き換える光電融合技術の推進といった2023年以降に本格化させる事業変革の施策を語った。

 味の素は近年DXで成果を上げている1社だ。全社横断型の組織であるDX推進委員会を設置し、白神副社長が事業モデルの変革を、CDO(最高デジタル責任者)を務める香田隆之執行役専務が全社オペレーションの変革をそれぞれ推進している。経済産業省などの「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2022」にも選定された。

DXの推進体制について説明する味の素の白神浩副社長
DXの推進体制について説明する味の素の白神浩副社長
(出所:日経クロステック EXPO 2022の配信をキャプチャー)
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 このような体制のもとで、大きく4段階に分けてDXを推進していると白神副社長は明かした。具体的には、全社オペレーションを変革する「DX1.0」、パートナー企業と連携して実現するエコシステム変革の「DX2.0」、事業モデルを変革する「DX3.0」、社会変革を起こす「DX4.0」である。

 直近の2020~2022年にかけては、主にDX1.0とDX2.0に取り組んできた。例えばDX2.0の取り組みの1つとして、企業や組織の垣根を越えて利用できる統合データ基盤を整備した。パートナー企業も含めてデータ基盤を活用することで、味の素グループだけでなく「バリューチェーン全体の業務効率の向上を目指している」と白神副社長は話す。

 続く2023~2025年には、白神副社長がリードするDX3.0を本格化させる。施策を進めるにあたり、グループの強みを生かせる4つの成長領域を設定した。「ヘルスケア」「フード&ウェルネス」「ICT(情報通信技術)」「グリーン」である。

事業変革の対象として「ICT(情報通信技術)」など4つの領域を定めた
事業変革の対象として「ICT(情報通信技術)」など4つの領域を定めた
(出所:日経クロステック EXPO 2022の配信をキャプチャー)
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 このうちICT領域では、同社の電子材料事業が世界の半導体市場の成長を追い風に大きく成長していることを踏まえ、半導体パッケージ向け材料の性能向上や磁性材料の開発などに力を入れるとした。さらに、NTTが掲げる次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」の推進団体への参画を通じて、光電融合技術向けの取り組みを強化していくという。

 一連のDX3.0の施策によって、ICTとヘルスケアの2領域で2030年に売り上げ約1200億円、事業利益約500億円の創出を目指す。ICTやヘルスケアの領域は一般に、開発した技術が事業に貢献するまでに5~10年程度の時差が生じる。白神副社長は「チャレンジングな目標になるが、ある程度の確度を持って実現すると考えている」と自信を見せた。