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 これはホテルか、それとも住宅か──。宮崎空港から車で10分強。夏は海水浴やマリンスポーツでにぎわう観光地・青島(宮崎市)で、常識を覆す建築物が11月の利用開始を控えている。

 新婚旅行ブームでにぎわった橘ホテルの跡地に建つのは「NOT A HOTEL AOSHIMA」。その名の通り単なるホテル“ではない”。時には自宅に、時には別荘に、時にはホテルになる。これまでの語彙では「ホテルとしても別荘としても自宅としても利用可能な建築物」という表現しかできない。説明に困るのは、用途や運用の方法が常識にとらわれていないからだ。

「NOT A HOTEL AOSHIMA」の外観。11月に開業する(写真:NOT A HOTEL)
「NOT A HOTEL AOSHIMA」の外観。11月に開業する(写真:NOT A HOTEL)
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 まずは概要を説明しよう。建物名称と同名のスタートアップNOT A HOTEL(東京・渋谷)は、自宅・別荘とホテルをアプリですぐに切り替えられるサービスを提供する。建築物は同社が企画・建設する。これまでに青島のほか、石垣(沖縄県石垣市)、北軽井沢(群馬県長野原町)、水上(群馬県みなかみ町)、那須(栃木県那須町)、福岡(福岡市)などの建設を発表している。同社は3年以内に、これらを含む国内30カ所の開発を目指している。

「NOT A HOTEL FUKUOKA」の外観パース。2023年夏に竣工予定。監修は小山薫堂氏、設計は佐々⽊慧建築設計事務所+NKS2 architects(出所:NOT A HOTEL)
「NOT A HOTEL FUKUOKA」の外観パース。2023年夏に竣工予定。監修は小山薫堂氏、設計は佐々⽊慧建築設計事務所+NKS2 architects(出所:NOT A HOTEL)
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1戸8億円の住宅をネットで「ポチる」

 特徴的なのは、1戸の住宅を複数人で「シェア」できる点だ。NOT A HOTELは1戸を1人のオーナーが購入しメンテナンス日を除き1年中利用できる権利(原則として所有権。NOT A HOTEL AOSHIMAのみ信託受益権)を取得する方法に加えて、30日単位での購入も可能。つまり、1戸につき最大12人のオーナーで所有権をシェアできる。申し込みから契約までは全てオンラインで行うことが可能で、サイトから直接申し込み、約1週間後には審査結果が通知される。いわば「住宅のシェアリングエコノミー」「住宅購入のDX(デジタルトランスフォーメーション)」として位置付けられる。

 2021年9月に発売した青島と那須の2拠点の販売価格は1戸購入で3億960万〜8億3760万円。NOT A HOTELの濱渦伸次代表取締役CEO(最高経営責任者)は「この価格帯の商品をEC(電子商取引)で扱うというのは我々にとってもチャレンジングだった」と振り返る。

 結果、まだ建設が始まる前だったにもかかわらず、これらの物件は2カ月でほぼ完売。今年に入って売り出した福岡も含め「販売状況は非常に好調。広い住戸から先に売れている」(同社広報)という。

 もっとも、単に別荘として年に決められた日数を利用するという点で言えば、会員制リゾートホテルも類似のサービスを提供している。NOT A HOTELがユニークなのは、オーナーは自身が利用しない日に物件をホテルとして他者に貸し出し、運用できる点にある。