DX(デジタルトランスフォーメーション)推進企業はDX人材の育成に重点を置いている。担い手がいなければDXを推進できないからだ。ただ、DX人材育成には「学びが進まない」「学んでも生かせない」との懸念がある。DX先進企業はこうした懸念を払拭すべく、7つの工夫を凝らしていると分かった。これらを順に紹介していこう。
- 工夫1 自律・成長を促す全体設計に
- 工夫2 デジタル以外のスキルも重視
- 工夫3 適切な人に適切な研修を
- 工夫4 とっつきやすくする
- 工夫5 演習は現場の生きた題材で←今回はここ
- 工夫6 学び後のつながりをつくる
- 工夫7 「留学」の制度を
工夫5 演習は現場の生きた題材で
第5の工夫は、現場の生きた題材を使って演習することだ。研修を終えても社員が成果を出せないといった懸念を払拭できる。
ブリヂストンは中級レベルのデータサイエンティスト研修で、社員自身が実業務の中からテーマを設定し、データ分析を通して成果獲得を目指す「業務テーマ演習」を実施している。得た成果は、大学の先生など外部講師も参加する発表会でプレゼン。内容をビジネス力、データサイエンス力、データエンジニア力の3つの観点で評価し、修了かどうか判断する。
この業務テーマ演習は半年程度かかるという。ハードルは高そうだが「こうした演習に取り組まなければ学んだことは身に付かない。部署に戻ってもスキルを活用できない」と増永明CDO(最高デジタル責任者)・デジタルIT基盤統括部門長は指摘する。
修了した社員が出た部署では、所属する他の社員にとってDXを学ぶ励みになっているという。修了者が所属部署で学んだことを共有すると「その他の社員のスキルレベルがアップし、レベルアップした別の社員が中級研修に入ってくる。そんな良いスパイラルが生まれている」(花塚泰史デジタルAI・IoT企画開発部長)。
発表会に参加する講師から「業務テーマ演習のレベルが格段に上がってきた」と評価も高い。業務テーマ演習の成果が発展して、新しい技術が製品に搭載されたり、新技術の開発につながったりして、プレスリリースが出るケースも生まれているという。