DX(デジタルトランスフォーメーション)推進企業はDX人材の育成に重点を置いている。担い手がいなければDXを推進できないからだ。ただ、DX人材育成には「学びが進まない」「学んでも生かせない」との懸念がある。DX先進企業はこうした懸念を払拭すべく、7つの工夫を凝らしていると分かった。最後の工夫は、DX人材育成の研修において「『留学』の制度を設ける」というものだ。
- 工夫1 自律・成長を促す全体設計に
- 工夫2 デジタル以外のスキルも重視
- 工夫3 適切な人に適切な研修を
- 工夫4 とっつきやすくする
- 工夫5 演習は現場の生きた題材で
- 工夫6 学び後のつながりをつくる
- 工夫7 「留学」の制度を←今回はここ
工夫7 「留学」の制度を
最後の工夫は、「留学」制度を設けることだ。対象者は限られるものの、所属している業務部門から一時的に離れることで深く学べる。
日本ガイシは、DXを推進するリーダー向けの研修で社内留学制度を採用する。具体的には、製造など業務部門から推薦された社員が、データ分析基盤の整備やデータ分析などを担うDX推進統括部へ1年間、社内留学してDXスキルを身に付ける。開始した2021年は3人、2022年は13人が留学している。
社内留学を始めた背景について斉藤隆雄DX推進統括部製造DX推進部長は「二足のわらじでデータ分析を学ぶのは難しい。そこで異動してもらうことにした」と説明する。留学生はデータ解析ソフトやPythonなどのスキルを身に付けながら、1年間で所属部門が抱える課題の解決を目指す。
社員を送り出す業務部門のメリットは大きい。留学した結果、データ分析で部品不良の原因を特定し解決する仕組みを実現させるなど、目覚ましい成果が生まれている。
NECも高度スキルの習得のため、「道場」と呼ぶ1年間の社内留学制度を設けている。AIの専門組織に留学した社員は、3つほどのプロジェクトに参加して実践力を身に付ける。最初はデータ収集など一部の作業を担い、最後はAIモデルの開発に取り組む。「2度目のプロジェクトは社員のレベルに合わせて任せる仕事を見極めたり、道場の後に携わる仕事を厚めに経験させたりして柔軟性を持たせている」(孝忠大輔AI・アナリティクス事業統括部上席データサイエンティスト)という。