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 「ありそうでなかった製品」(オークマ代表取締役社長の家城淳氏)――。大手工作機械メーカーのオークマは、加工セルの自動化ニーズに応える新製品「smarTwinCELL(スマートツインセル)」を2023年5月以降に発売すると、2022年10月25日の記者会見で発表した。工作機械や周辺設備の動きをまとめて制御する加工セルコントローラーだ(図1)。加工セルの制御に必要なPLCラダープログラムなどの高度な専門知識がなくても、コントローラーの簡単な操作だけで、加工セル複数の設備の1つひとつの動作を指示できる。

図1 「スマートツインセル」
図1 「スマートツインセル」
データ入力や工程の指示といった基本的な操作は、ディスプレーやキーボードを備えた本体で実行する。写真右の黒色のペンダントには、工作機械の操作でおなじみのパルスハンドルがついている。パルスハンドルを使ってロボットを操作して、ワークの把持位置などの動作位置を細かく設定できる。工作機械やロボットなどの周辺機器とスマートツインセルは有線で接続する。(写真:日経クロステック)
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 多品種少量生産へのシフトを背景に、部品加工業界では工作機械の近くにロボットや周辺設備を設置して、ワークのハンドリングや加工、検査など一連の工程を1か所にまとめて自動化を図る生産システム「加工セル」の導入が広がっている(図2)。

図2 加工セルのイメージ
図2 加工セルのイメージ
(出所:オークマの資料を日経クロステックが撮影)
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 従来、加工セルの構築・導入は、ロボットはロボットメーカーが納め、制御プログラムはシステムインテグレーターが担うといった形で分業化されており「(加工セルの)システム全体として面倒を見るような事業形態がなかった」(同氏)。しかし、ワークや工程の追加・変更によって加工セルを再構築する度にそれぞれの専門家を工場に呼んでセルを長時間止めていては、生産実績や効率に大きく影響し、多品種少量生産の時代にそぐわない。オークマはこうした状況に目を付け、現場の作業者だけで加工セルの自動化を進められる新たなコントローラーを開発した(図3)。

図3 スマートツインセルによる加工セルの自動化イメージ
図3 スマートツインセルによる加工セルの自動化イメージ
従来は周辺設備やロボットなどの制御にそれぞれ専門的な知識が必要で、加工セルの構築にはさまざまな専門家(プロ)が携わっていた(上)。新たなコントローラーでは、作業者自らが加工セル全体の制御システムを1つのコントローラーで構築できる(下)。(出所:オークマの資料を日経クロステックが撮影)
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