牧野フライス製作所は、形状精度と加工品位を高めたワイヤ放電加工機「UPX600」、径1250mmの大型ワークを切削できる5軸横形マシニングセンター「a900Z」を「第31回 日本国際工作機械見本市(JIMTOF2022)」(2022年11月8~13日)に出展した。2台ともJIMTOF会期初日の2022年11月8日に発売した新製品。他にも、電気自動車(EV)用モーターのモーターケースのような大径の円筒形状を効率的に切削できる立形マシニングセンター「L2(旋削仕様)」などを出展した。
ワイヤの上と下を独立制御で動かし精度向上
ワイヤ放電加工機UPX600は、形状精度を高め(設計形状との差を小さくする)、加工液に水を使う水放電ながら油放電と同等の加工品位(面粗さ)を確保した(図1)。加工時間は油放電の半分程度で済む。形状精度の向上は、ワイヤをワークの下で前後左右に動かすX・Y軸と、ワークの上で前後左右に動かすU・V軸を完全に独立して駆動する仕様で実現した。
従来のワイヤ放電機械は、一般的にU・V軸の機構がX・Y軸で動くテーブルの上に搭載されているため、U・V軸の機構の質量を合わせて動かすX・Y軸の負荷が大きくなり、慣性による誤差が出やすくなるうえ、その誤差がU・V軸にも伝わる。そこでUPX600では、X・Y軸とU・V軸を完全に独立して制御する方式にした。円形状を加工した際の真円度などが大きく向上する。
面粗さは、上記のワイヤの制御性向上と、より小さな電力のパルスをきめ細かく発生させる電源制御とで実現した。加工槽の周囲の電磁的シールドを強化するとともに、加工槽周辺で不用意に電気をためこむ浮遊容量を減らして、パルスの波形が鈍らないようにした。
ワイヤ放電加工で加工品位を下げる要因の1つは線状の加工痕が付くことで、それを消すための後加工である研削が大変になり、その結果当初予定していた形状からのかい離が生じがちになる。加工品位が向上すれば、研削加工も容易になる。応用例の1つとして、鋼材料を切り抜いて造った順送金型のパンチをラッピングにより研磨して、チタンコーティングを施したものを展示した(図2)。
最大ワーク寸法は1030×800×300mm、最大ワーク質量は1800kg。2023年9月から出荷を開始し、年間120台の販売を目標とする。国内価格は2400万円(税別)。